2018.8.30

唯一無二の木版花鳥画に魅せられる。花鳥画の名手・小原古邨の国内最大級の展覧会が茅ヶ崎市美術館で開催

海外で高い人気を博しながらも、日本ではこれまでまとまったかたちで紹介される機会の少なかった小原古邨(おはら・こそん)の展覧会「原安三郎コレクション 小原古邨展 ―花と鳥のエデン―」が茅ヶ崎市美術館で開催される。会期は9月9日~11月4日。

小原古邨 蓮に雀 明治後期 原安三郎コレクション
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 2018年に開館20周年を迎えた茅ヶ崎市美術館では、年間を通して「版の美」と称し、版画の魅力を伝える展覧会を開催している。その第2回目は木版花鳥画、版下絵の制作で知られる小原古邨(おはら・こそん)の展覧会「原安三郎コレクション 小原古邨展 ―花と鳥のエデン―」だ。

小原古邨 芥子に金糸雀 明治後期 原安三郎コレクション

 石川県金沢市に生まれた小原古邨(1877~1945)は、花鳥画を得意とした日本画家・鈴木華邨に師事し、古邨の名前で絵画共進会に日本画を出品。たびたび褒状を得るなど高い評価を得ていた。

 明治末期には版元・大黒屋から花鳥画を刊行、海外への輸出を念頭に置いた版下絵の制作で高い人気を獲得。その後昭和期に入ると、渡邊版画店から「祥邨」の名で、また酒井 好古堂と川口商会の合版では「豊邨」の名前で制作を続け、とくに海外で好評を博した。

小原古邨 雪の柳に烏 明治後期 原安三郎コレクション

 古邨による花鳥画の魅力は、確かな画力と技術によって表現された淡い色合いの美しい世界。そして版元・大黒屋による高度かつ精緻な彫摺技術と、雪月花の情感までも表現する古邨の確かな力量だ。その作品からは伝統的な東洋絵画が持つ様式美に加え、西洋絵画的な躍動感や遠近表現が見られる。

 また、正面摺やきめ出し、あてなしぼかしなど、江戸時代を通じて培われた版画技術が惜しみなく投入され、唯一無二の花鳥版画のシリーズが生み出されている。

小原古邨 菫に猫と蝶 明治後期 原安三郎コレクション

 本展は実業家・原安三郎の旧蔵によるもの。摺および保存状態がきわめていい原コレクションの古邨作品約260点のなかから、230点もの作品を初公開予定だという。

 2016年から全国巡回した展覧会「広重ビビット」展でも、その豊富さと保存状態のよさが注目を浴びた原コレクション。本展では原安三郎についても紹介する。

小原古邨 菜の花に揚羽蝶 明治後期 原安三郎コレクション 

 海外では高い人気を誇りながらも、現代の日本国内ではほとんど紹介がされてこなかった古邨。その優美な花鳥画の世界をじっくりと堪能できる貴重な展覧会だ。