風間サチコは1972年東京都生まれ。徹底したリサーチと鋭い批評眼に基づきマンガ表現を思わせる木版画を制作、現在・未来につながる歴史の暗部を彫り起こしてきた。
そんな風間が「ディスリンピア2680」展では2.4×6.4メートルにおよぶ、自身過去最大規模の新作《ディスリンピック2680》を発表する。選ばれた者のみの存在価値を認める「優生思想」のいびつさに着目した風間が、構想期間を含め4年にわたり、戦前からの関係資料をリサーチ。優生思想がもたらすディストピア的な理想の国家のイメージを、巨大な木版画で表現する。
戦前日本の「国民優生法」と1940年に開催される予定だった幻の東京オリンピック、そして2020年の東京オリンピック。作家は、過去と未来の国家的イベントに思いを馳せながら、架空の都市「ディスリンピア」におけるオリンピック「ディスリンピック2680」の開幕式典を、皮肉とユーモアを交えて描く。
健康至上主義の祝祭と人類淘汰の地獄が、鋭く木版に刻まれる。