1917年東京都に生まれた清宮質文(せいみや・なおぶみ)は、東京美術学校で油絵を学び、戦後、教員生活を経て53 年より制作に専念し、本格的に木版画に取り組む。
生誕100年を記念して開催される本展では、年代順に制作テーマの変遷を追いながら、木版の代表作に加え、水彩、ガラス絵など191点を紹介。水戸藩の支藩である守山藩士の末裔でもあり、水戸の地を繰り返し訪れていたという清宮を、ゆかりの作家として紹介する茨城県内初の回顧展となる。
油性のインクではなく透明水彩を用い、摺りごとに微妙に色調を変えることで、詩情あふれる作品を生み出した清宮。版による複製性よりも、「彫り」の線や「摺り」による色の重なりといった版画ならではのイメージのなかに表現の可能性を追求し、1枚あるいは数枚しか摺られなかった作品も多い。
本展では、同じ版の異なる摺りの作品や、版木もあわせて展示。「木版多色刷り」の技法について知ることができるとともに、清宮の制作の現場を垣間見ることができる貴重な機会となる。