時代が江戸から明治に移り、新時代にふさわしい日本美術のあり方が模索されるなか、岡倉天心は新たな日本画の創造を目指し、1898(明治31)年に日本美術院を設立。同院は一時低迷したものの、1914(大正3)年に再興され、古典を規範に日本画の新たな可能性を切り拓こうとする画家たちの活動の場であり続けている。
そんな日本美術院の創立120年を記念し、山種美術館では「日本画の挑戦者たちー大観・春草・古径・御舟ー」を開催。岡倉天心に率いられるかたちで日本美術院の創立に参加した横山大観と菱田春草、および次世代の旗手として活躍した小林古径と速水御舟の4名を中心に、同院の歴史を飾る日本画の挑戦者たちの優品を一堂に展示する。
本展の見どころのひとつは、草創時以来、日本美術院の精神的支柱であり続けた大観や、短い画業の間に多くの秀作を生み出した春草による名作。今回の展覧会では、大観の《蓬莱山》(1939頃)や春草《月下牧童》(1910)も公開される。
また、線描主体の格調高い画風を確立した古径の代表作《清姫》(1930)も修復後初公開。この《清姫》は連作全8点の一挙公開は約5年ぶりとなる。
また、葉室麟原作の映画『散り椿』の公開を記念して、小説の表紙を飾った速水御舟《名樹散椿》[重要文化財](1929)も特別出品。期間限定展示(10月16日〜11月11日)のため、この機会に観覧したい。
近代以降の日本画壇において常に先導的な役割を果たし、挑戦し続けてきた画家たちの珠玉の作品たちが紹介される本展。120年の節目に、その先進性を再確認することができるだろう。(※作品はいずれも山種美術館蔵)