王城の地・京都では、平安時代から現代にいたるまで、多くの刀工が工房を構え、数々の名刀を生み出してきた。これら京都で製作された刀剣は、つねに日本刀最上位の格式を誇り、公家、武家を問わず珍重され、とくに江戸時代以降は武家の表道具として、大名間の贈答品の代表となる。
本展は、現存する京都、すなわち山城系の鍛冶の作品のうち、国宝指定作品の17件と、著名刀工の代表作を中心に展示。平安時代から平成にいたる山城鍛冶の技術系譜と、刀剣文化に与えた影響を探りつつ、刀に関わる近世京都の文化も紹介する。
展覧会は全8章で構成。京の刀の誕生から苦難、復興、展開まで、美しい名品とともに山城鍛冶の物語が語られる。刀工たちの地位向上にかかわった後鳥羽上皇ゆかりの品や、上皇自らの作と伝わる《菊御作》、さらに、公家や武家の肖像画に表されている武装と、それに類似する刀剣を提示することで、当時の習俗を再現する。
また、戦乱を描く合戦絵巻の名品や、伊藤若沖筆の《伏見人形図》、千種有功や有栖川宮など、本業の傍ら作刀を行った公家や大名の作品も取り上げ、武家文化だけでなく、公家・町衆を含めた京文化のなかで、刀工たちが果たした役割に迫る。
刀剣文化に焦点を当てた京都国立博物館での初の試み。山城鍛冶の歴史的な名品を堪能するとともに、平成まで続く刀剣と京文化の関わりに注目したい。