東京芸術劇場が2013年より年に1作品のペースで取り組む「RooTS」は、現代演劇のルーツとされる70年代前後に上演された傑作戯曲を、気鋭の若手演出家により復刻し、あらためて日本演劇の魅力を再発見する人気シリーズだ。
これまでに、つかこうへい×三浦大輔(ポツドール主宰)による『ストリッパー物語』(2013)、清水邦夫×熊林弘高による『狂人 なおもて往生をとぐ』(2015)、寺山修司×藤田貴大(マームとジプシー主宰)による『書を捨てよ町へ出よう』(2015)、竹内銃一郎×小野寺修二(カンパニーデラシネラ主宰)による『あの大鴉、さえも』(2016)、唐十郎×福原充則(劇団「ピチチ 5(クインテット)」)による『秘密の花園』(2018)を上演。いずれも話題を集めてきた。
そして今年は、「RooTS」初の再演として、藤田貴大による『書を捨てよ町へ出よう』の上演が決定。『書を捨てよ町へ出よう』は、同名の評論集、舞台、映画のそれぞれが別の内容になっており、それぞれに鬱屈した青春が描かれた寺山修司の問題作である。
本作が再演されるにあたって、主人公の「私」という難役に挑むのは、本作が初舞台となる注目の若手俳優・佐藤緋美。「私」と同じくして、現在18歳である佐藤がどのように「私」を演じるのか期待が高まる。
そのほか、複数の藤田作品に参加し見事な演奏を披露してきたドラマーの山本達久や、藤田作品には欠かせない存在感を放つ女優の青柳いづみが参加。また、作家としても高い評価を得ている芸人の又吉直樹、現代短歌を代表する歌人であり、評論やエッセイの分野でも活躍する穂村弘は、前回に引き続き映像出演するという。
宣伝美術は、作品世界を大事にした装丁で作家からの信頼も厚いブックデザイナーの名久井直子が手がける。宇野亞喜良によるイラストレーションを得て、寺山の重厚な世界観を描出したという。衣裳には独自のストーリー性を持つテキスタイルが人気のミナペルホネンが参加するなど、今回も藤田演出のもとに第一線のクリエイターが再結集している。
前回から3年の時を経て、藤田はどのような世界観を表出させるのだろうか。寺山作品への再挑戦に期待したい。