フランスのショコラティエであるパトリック・ロジェは、2000年にショコラティエ最高の栄誉にあたるM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)を30歳という若さで授与された経歴の持ち主。現在はフランスに8店、ベルギーに1店出店しており、日本でも人気のショコラティエだ。いっぽうでロジェは彫刻家としても精力的に活動しており、自身の店舗に作品を飾っているほか、パリ市内のクリスティーズのギャラリーでも作品を発表している。
そんなロジェの日本初となる個展「TRAVELS TRAVEL(LER) 」展が、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3で開催されている。本展で展示されているのは、チョコレートを直に削った作品《北の国》をはじめ、ブロンズやアルミニウム、大理石やコンクリート、そして瑪瑙やダイヤモンドの原石など、素材とフォルムにこだわり様々な素材を使用した39点の彫刻だ。また、いくつかの作品はそのスケッチも展示されている。
ロジェは本展に際して、「どこまでがチョコレートでどこからが彫刻なのか。この疑問の答えは作品の中に見つかるでしょうか。おそらく私にとって彫刻は、挑発し、告発し、ときには糾弾するための手段なのです」とコメントを寄せている。
なお、本展のキュレーターと展示デザイナーを務めるのはパリに拠点を置き、グローバルに活動しているリナ・ゴットメ。日本では17年に開催された東京国立博物館・表慶館で開催された「フランス人間国宝展」の展示デザインを手がけたことも記憶に新しい。ゴットメは本展について「本展は素晴らしいショコラティエによる彫刻作品の世界を訪ねるという旅に見立てた貴重な作品群の展示です。食べられる象嵌から素材のフォルムまで、パトリック・ロジェは境界を越え、領域を横断し、人間を取り巻く世界の見方に新しい視点を発信します」と語る。
「空想しながら鑑賞する」という意味を込めてつけられたというタイトル「TRAVELS TRAVEL(LER)」が示すように、旅をするように作品と展示空間を楽しみたい。