「カディ(Khadi)」と呼ばれるインドの白い綿布は、手紡ぎ・手織りによってインド各地でつくられている伝統的な文化のひとつだ。インド国旗に糸車が描かれている背景には、輸入品を断ち国産の綿布に身を包む不買運動から、独立、そして明日への希望の象徴となったカディがあったという。
そのようなカディに焦点を当てた展覧会が、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3にて、2018年4月18日より開催される。
本展では、カディを含めたインド・テキスタイルなどの幅広い文化復興活動で知られるマルタン・シンの活動にも着目。シンは17年に亡くなるまで50年もの長きにわたり、インド・テキスタイルの開拓や展示、遺産保全に取り組み、独自の文化復興策を提示し、そのデザインとファッションの現代美学を育成するために活動を行っていた。
シンはキュレーターとして、ニューヨーク・メトロポリタン美術館をはじめ、イギリス、フランス、スウェーデン、中国、そして日本など世界中の美術館でインドテキスタイルの展覧会を手がけ続けたほか、インド政府の芸術機関の職員としても重要な役割を担い、国家の文化政策に大きく貢献。1986年にはインド政府から、民間人に授与される最高勲章のひとつであるパドマ・ブーシャン勲章が贈られた。
インドの独立、雇用、死生、創造という観点からカディを「自由の布」と呼び、この綿布で仕立てられる衣服、カディ・クルタを日常着として纏っていたシン。イッセイ ミヤケは、80年代からシンとのコラボレーションを通じて、インド文化との対話ともいえる衣服づくりを行ってきた。現在では、テキスタイルから発想するイッセイ ミヤケ内のブランドHaaTの中で、現在もカディを取り入れている。
本展では、つくり手そのままの表情を見せるカディとその思想を、マルタン・シンの活動の根幹を担ってきた人々を現地で取材した映像とともに紹介。インドのものづくりに宿る精神と息吹を体感できる内容だ。
なお、21_21 DESIGN SIGHT SHOPではインド・テキスタイルをはじめとしたインドの手仕事によるアイテムを紹介。実際にインド・テキスタイルを手にとることができる。
また、HaaT/AOYAMAでは4月18日より、「INDIAN CRAFTSMANSHIP −インドのものづくり−」と題して、HaaTとカディのシリーズをはじめ、アーカイブの伝統的な衣服のかたちやプリントを施したアイテムを、シンにまつわる展示とともに紹介する企画も行われる。こちらも合わせてチェックしたい。