田原桂一(1951〜2018)は71年に渡仏したとき、日本の柔らかい光とは異なるヨーロッパの刺すような鋭い光に衝撃を受け、写真家として活動を始める。それ以降パリを拠点とし、「光」をテーマに写真、彫刻、インスタレーション、建築と幅広く活躍した。77年に「窓」シリーズでアルル国際写真フェスティバル大賞を受賞したのち、木村伊兵衛写真賞、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ、パリ市芸術大賞など数多くの賞を受賞し、日本、ヨーロッパを中心に数多くの展覧会を開いた。
本展は、初期の作品「窓」シリーズや、ルーブル美術館をはじめヨーロッパの彫刻を撮影し、石やガラスに焼き付けた「トルソー」シリーズなど、作品を通じて田原の活動の軌跡をたどることができる。さらに、作品と共にアトリエで使用されていたソファーや照明など田原の愛用の品々も展示。
つねに「光」を追い求め、「光をつかみ取りたい」と語っていたという田原が思い描いていた「Sens de Lumière(光の感覚)」。田原の一周忌を迎え、あらためてその光を感じたい。