失われた日本映画の「声」を呼び起こす。平川祐樹がアンドーギャラリーで「映画になるまで 君よ高らかに歌へ」新作を発表

東京・江東区のアンドーギャラリーにて、平川祐樹の個展が開催、「Lost Films」シリーズの第三作《映画になるまで 君よ高らかに歌へ》が発表される。会期は6月12日〜7月28日。

 平川祐樹は1983年愛知県生まれ。映像を主軸とし、場所や事物に宿る「時間」や「記憶」をテーマに、作品を制作している。2011年よりドイツを拠点に多数のアーティスト・イン・レジデンスに参加し、15年には文化庁新進芸術家海外研修員としてベルリンに滞在。これまで「眠りにつくまで」(美濃加茂市民ミュージアム、2013)、「あいちトリエンナーレ2013」、「札幌国際芸術祭2014」、「19th DOMANI・明日展」(国立新美術館、2016)などに参加。17年からは、世界中の失われた映画を扱い、失われた映画の声を喚起するヴィデオ・インスタレーションを作成するプロジェクト「Lost Films」に焦点を当てて活動をしている。 

 そんな平川が、アンドーギャラリーで初の個展を開催、「Lost Films」シリーズの第三作となる映像作品《映画になるまで 君よ高らかに歌へ》を発表する。

 壁に投影された黒い背景に、古い日本映画のタイトルと製作年が淡々と現れては消え、タイトルを朗読する男性の声が低く会場に響く。一見するとタイトルの羅列のように見えるが、それぞれのタイトルにゆるやかな繋がりがあり、詩的な意味が垣間見える。それらの映画は、かつて一般公開された日本映画で、雑誌やポスターなどに記録はあるものの実際のフィルムが残っていない「失われた日本映画」だ。

 平川は制作の過程で、失われた日本映画のリストを眺めていた際に、いくつかの映画タイトルがリストの中でつながり、ひとつの言葉の流れを構成していることに気がついたと語る。それらのタイトルを抽出し並べ替えていくと、断片的ではあるものの詩と呼べるようなものが完成した。それは、輝かしい映画史の背後で失われてきた日本映画の「声」なのだという。

 《映画になるまで 君よ高らかに歌へ》は、張り巡らされた歴史の糸を絡め取り、黒い光としてスクリーンに投影し、失われた何千という膨大な数の映画の魂を呼び起こす。失われた映画の「声」に、耳を傾けたい。

編集部

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