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「アートフェアのモデルを根本から考え直したい」。PAVILION共同創設者ウィレム・モールズワースに聞く【2/3ページ】

アートフェアを「発見の場」にする

──「PAVILION」の今後に対するビジョンはありますか?

「PAVILION SEOUL」の展示風景 Courtesy of PAVILION Seoul.

WM ここを「発見の場」にしたいと思っています。人がアートに惹かれるのは、何かを発見できる場所であり、キャリアが成長する場所だからだと思います。ここには、すでに高く評価されている作家も参加しています。若い作家の作品だけである必要はありません。キャリアを確立した作家による以前の作品や、高額な作品があってもいいのです。

台北で「PAVILION」を開催したときには、非常に高額な作品も展示しましたが、結果は好調でした。今後も引き続き、評価を確立した作家の高額な作品も紹介していきたい。それがこのモデルに反するとは思いません。アートフェアは、作品を購入し、収集する場所でもありますから。

──ここまでは作品を売買することについてお話しいただきましたが、収集することに関してはどうお考えでしょうか。

WM 収集するというのは、とても不思議な行為です。すごく人間的でもあります。大学を卒業したとき、私は自分を禅的なミニマリストだと思っていました。「執着から解放されて生きよう。何も持たず、可能な限り所有物を減らそう。あらゆるものは移ろうと知っているのだから」と考えていたのです。それがいまでは、アートを売っています。

「PAVILION SEOUL」の展示風景 Courtesy of PAVILION Seoul.

 自分がしていることを理解するうえで大きな助けになったのが、アーシュラ・K・ル=グウィンの短いエッセイ『小説ずた袋理論(The Carrier Bag Theory of Fiction)』(1986)です。そのなかで、彼女は一種のオルタナティブな人類史を提示しています。アメリカ人である私は、人類の歴史とは剣を持った男たちが何かを征服していく歴史なのだ、という物語を内面化していました。しかし彼女は、それとは異なる物語を示します。袋を持ち、物を運ぶ女性たちの物語であり、彼女たちが運ぶ物こそが、私たちが誰であり、なんであるかを語るというものです。

 私はそれに強く共鳴しました。アートを収集することについて考えるとき、私は物語を語ることについて考えます。こうした物を、私たちが誰であり、何であるかを表すものとして考えるのです。それらを大切にすることで、私たちの物語を次の世代へ伝えていくことができます。大切なのはそこへ立ち返り、そこから何かを築こうとすることです。

地域化する市場と、これから形成される「物語」

──アジアのアート市場については、どう考えていますか。

WM  いま世界は、地域化が進む局面にあると思います。世界が分断されている、というのは正確ではありませんが、市場はそれぞれ異なる方向へ分かれつつあります。人々は「世界のアート市場に何が起きているのか」と尋ねます。いま起きているのは、キュレーションや思想の面で、さらには市場の面でも、人々が長いあいだ求めてきたことなのです。

「PAVILION SEOUL」の展示風景 Courtesy of PAVILION Seoul.

 アートを私たちの物語として、また、私たちが何者であるかを示すものとして理解するためには、自分たちが誰であり、自分たちの物語が何であるかを認識する必要があります。

 ある意味で、私はいまの状況を嬉しく思っています。現時点では多くのお金が市場から消えてしまったように見え、困難な時期ではあります。しかし、そのお金は新しい居場所を探しているだけなのだと思います。ものごとが育ち、こうした物語が形成されるには時間がかかります。それでも、物語はやがて形成され、成長していくでしょう。すでに存在し、多くの人に愛されている物語もあります。それほど頻繁に起きることではありませんが、物語が国境や国家のナラティブを越えることはありえます。

編集部