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アート・バーゼル香港の使命とは何か? ふたりのディレクターが語る

アジアのアートフェアの勢力図が変化しているなか、アジア最大のアートフェアを維持しているアート・バーゼル香港は、これらの変化をどのようにとらえているのか。またその使命とは何か? 同フェアの新ディレクターであるアンジェル・シヤン・ルー(Angelle Siyang-Le)と、アート・バーゼル・ディレクター・アジアであるアデリン・ウーイ(Adeline Ooi)にインタビューを行った。

聞き手・文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

アート・バーゼル香港2022の様子 Courtesy Art Basel

 アート・バーゼル香港は、アジア最大のアートフェアとして知られているが、その野望はそこに留まらない。

 2021年、アート・バーゼルは、プレローンチされた「アートウィーク東京」とシンガポールのアートフェア「S.E.A. Focus」に協力し、コンサルティングサービスやVIPネットワークを提供することを発表。昨年、その親会社であるMCHグループは、今年1月にシンガポールで開催された新しいアートフェア「ART SG」に15パーセントの少数株主として参加することも発表しており、アジアにおける足跡を次第に広げている。

 アート・バーゼルは、アジアのコアビジネスは香港のフラッグシップイベントであり、アジアで2番目のフェアを開催する予定がないことを繰り返し強調しているが、「フリーズ・ソウル」の立ち上げやART SG、TOKYO GENDAIなどの新しい国際的アートフェアの登場により、アジアのアートフェアの勢力図は変化していくだろう。

 こうした変化をアート・バーゼルはどのようにとらえているのか。また、コロナ禍以来初めて海外からの来場者がホテル隔離を受けずに参加できる今年の香港フェアに対してどのような期待を抱いているのか。アート・バーゼル香港の新ディレクターであるアンジェル・シヤン・ルーと、アート・バーゼル・ディレクター・アジアであるアデリン・ウーイに話を聞いた。

アート・バーゼル香港2022の様子 Courtesy Art Basel

地域内のインフラ構築の重要性

──まず、今回の人事異動についてお伺いします。アンジェルさんをアート・バーゼル香港のディレクターに迎えてどう思われますか。

アデリン・ウーイ(以下、アデリン) 私は常々、次の世代を育てることが大切だと考えています。私は8年間この役割を担ってきたので(アート・バーゼルでは10年目)、アート・バーゼルがアジアでの取り組みをさらに発展させるために、もっとサポートがあってもいいと思いました。また、アジアでのビジネスにおいて私たちは新たな可能性を見出しており、長年にわたりアジアにコミットしてきたからこそ、アート・バーゼルの力を活用して地域のインフラ整備により注力していきたいと思っています。アジアのアートシーンは大きく成長と発展を遂げています。それが成長し続ける限り、私たちもともに利益を享受することができると信じています。 

──アンジェルさんはこの新ポジションについてどうとらえていらっしゃいますか?

アンジェル・シヤン・ルー(以下、アンジェル) アート・バーゼル香港のディレクターに任命されたことを光栄に思っています。私は過去10年間、アート・バーゼルで地域のコミュニティやギャラリーのサポートをしてきました。地域のコミュニティを継続的にサポートしなければならないという義務をより強く感じています。

──ふたりのディレクターの役割はどう変わるのでしょうか。

アデリン アンジェルはいま、香港のショーの顔になっています。私は日々の運営から一歩退くことになって、これからは香港を裏から支えていきます。私の肩書きは「Director Asia」ですが、これは香港の戦略的発展に寄与するもので、チームをサポートしていくつもりです。 

アンジェル 私はアート・バーゼル香港のショーとその戦略、そして今後の展開にフォーカスしています。アデリンと私は長年一緒に仕事をしてきたので、彼女はこれからも私のアドバイザーになります。 

アデリン パンデミックによって、私たちの生活やアートの世界はすべて変わったと思います。そのなかで重要な収穫のひとつは、コラボレーションです。香港のショーは、香港だけでなく、アジア全域の寛大さとサポートから本当に恩恵を受けました。香港のコレクターは、様々なアートシーンで私たちをサポートし続けてくれます。だから、新しい可能性に目を向け、ほかに何ができるかを考えることが必要だと感じています。過去2回の「アートウィーク東京」へのサポートなども、まさにインフラ構築の一環です。

「アートウィーク東京」のバス

コラボレーションによりアジアのアートシーンを補完し合う

──アートウィーク東京といえば、この2年間のコラボレーションの成果は実際どうだったのでしょうか。 

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