Chim↑Pom from Smappa! Groupはなぜ改名を選んだのか? 「変異」することの重要性

4月27日にChim↑Pom から名前を変えた「Chim↑Pom from Smappa!Group」。なぜ彼女/彼らは改名を行い、何を問いかけるのか。その経緯とともに、現在の心境をChim↑Pom from Smappa!Groupのエリイと卯城竜太に話を聞いた。

聞き手=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

Chim↑Pom from Smappa! Groupのエリイと卯城竜太

──今回の改名は、「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に必要な協賛金を集める際、Smappa! Group(以下、Smappa!)からの申し出のみが断られたことに端を発しています。そもそもこの協賛金をアーティストであるChim↑Pom from Smappa! Groupとギャラリーが集めることになった経緯を教えて下さい。

卯城 美術館の予算があって、そこに収まれば問題はないんだけど、プランによっては超過してしまう。だからファンドレイジングしましょうと美術館から提案されました。クラファンなどはプランが決まる前から相談されましたが、これらはもちろん合意の上です。

エリイ あの広いスペースをふんだんに使って、実現したいことがめっちゃあった。例えば、一つの部屋を二層構造にしてアスファルトを敷いて、道をつくったり、美術館の入り口に託児所をつくったり。良い展覧会にするにはみんなで頑張ってやろうみたいな気持ちだったし、そうなったと思う。

卯城 だよね。実際、それらは全部一緒に実現できたし、インスタレーションは森美術館とはベストを尽くし合えた。とはいえスーパーラット問題(編集部注:代表作のひとつである《スーパーラット》が美術館会場に展示できなくなり、離れた場所に共同プロジェクト・スペースが設置された)が影響して、協賛会社のロゴを掲出するチラシなどの制作も遅れていたしね。

エリイ 展覧会のポスター写真を撮ったのはオープニングから2ヶ月前。単独のプレスリリース自体が打たれずに「展覧会をやる」のかがはっきりしていないように感じた私は、人にはそういうことをしないようにしようと心に誓いました。

卯城 通常は、おおよその目安としてそのプレスリリースは会期5ヶ月前に出すらしいしね。でも結局出たのは1ヶ月前。なんて異常な展覧会なんだとChim↑Pomらしさを実感しました(笑)。展示によって資金集めが必要になること自体は仕方ないけど、ここでは言えないことも含めてその経緯が複雑すぎるんです。

「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」エントランス

──Smappa!が出資すると申し出てきたのはいつ頃ですか?

エリイ 私は展覧会をやるからには、全身全霊を傾けてやりたい。だから、友達に協賛をしてくれる人が誰かいないか聞いたりしていた。で、締め切りがギリギリのタイミングで、友達が話を持ってきてくれた。それと同時に「そういえばSmappa! Groupがあるじゃん」と思って、最後の駆け込みで同時に2件出した。そうしたらSmappa!の方だけ弾かれたんですよね

卯城 直前だったってこともあったけど、よくよく聞いてみると、本当は僕らがリリース(下記)に書いた通り、森ビルのブランディングの観点から、という理由だった。

エリイ 心をどうこねくり回しても、違和感があって疑問が浮き出てくる。正式回答を聞きたいと伝えた。これが職業差別的な問題だとしたら、私は一緒に仕事はできないと思った。

 突き詰めれば、歌舞伎町などと共に生きてきたChim↑Pomの展覧会はやるのにSmappa!のロゴは弾くのって、アートによる多様性の搾取だなと私は思いましたよ。展覧会の企画とかトークイベントとか、美術館は公共性を謳って良いこと言うのに、いざ自分がその問題に直面すると排除する側になる。実践と言動が伴ってない。それが今回思ったこと。

卯城 クリエイティブ産業でブランディングして猥雑なものを排除するジェントリフィケーションの典型ですよね。簡単な話ではないので、話し合いを続けることにしたんです。

ことの経緯は、森美術館で開催中の「ハッピースプリング」展での設営費などを賄うために美術館から協力要請を受け、一部作家側で集めることとなった約1000万円の協賛金に端を発しております。私どもからいくつかの企業にお声がけさせて頂いたうち、Smappa!Groupからのお申し出だけが美術館からお断りされました。
互いに話し合い解決策を模索して参りましたが、先方は「六本木ヒルズという『まちづくり』における『ブランディング』」だと理由を説明し、「森美術館はヒルズという『文化都心』の顔である」と、接客を伴う水商売の会社のロゴは掲載しないと今月改めて回答がありました。(Chim↑Pom from Smappa!Groupのリリースより)

──森美術館からの協賛金拒否の理由として、「水商売の会社のロゴは掲載できない」、ということが明記されていたのでしょうか?

卯城 「水商売」という定義はそもそもアーティストなども含む広義のものです。協賛金拒否の理由は文書ではいただいてませんが、口頭で「接客を伴う」風営法に関する職種が対象だと知らされました。が、その時点でいくつか確認が必要だった。まずは職種でくくること自体が差別的な行為にあたらないかということ。例えば「同性愛者だから」とか「有色人種だから」とか、「特定の職種や階級」……と属性を理由に個を排除してきたことが差別の歴史ではなかったかと。もちろん、反社のように敬遠すべき職種もあるでしょう。でもSmappa!にまでその論理を拡大するのはあまりに乱暴だし無理すぎる。

エリイ でも協賛金を集めてる段階で「スマッパもあるね」という話を私がしたときにまず、竜太は今の事態が起きるって予見していたよね。以前、会田(誠)さんの個展のとき、似たような経緯があったことを知っていたから。だから、美術館も断るはめになるし、夫も傷つくことになるかもしれないって言っていて。私はそういうふうに慮ること自体が、差別につながっていくって伝えた。態度が大事だから。Smappa!は水商売が差別されない環境づくりに力を注いできた。日陰を歩かないっていう態度だよね。コロナで「夜の街」とスケープゴードにされたときに夫が、「社会の一員だと思ってほしくて地域活動やゴミ拾いなどをずっと続けてきたが、まさかこんなことで、社会の一員だと言われるとは思わなかった」とメディアで発言しているのをみました。自分の展覧会でだけは、そんなことを起こしたくなかった。

ANOMALYでの個展「Chim↑Pom from Smappa!Group」より、Smappa!Groupの協力を得て制作された新作の映像作品

卯城 エリイちゃんに無意識の差別だと指摘されたことは痛かったよ。「差別」って強い言葉だから当事者が身近でないと遠く感じる人も多いけど、その一言で自分は思い直した。多くの水商売の会社は、どうやって水商売との関わりを隠して別事業をするかに必至になっていると聞きます。手塚さんはその道を取らずにありのままで社会に受け止めてもらうために、公益的な活動や発言も歌舞伎町から発信してきた。というか、そのままでも介護やブックセンター、アートスペースなども手掛け、歌舞伎町振興組合の理事として街の治安向上に努めてる人ですよ。考えてみると、そういう努力はいつか必ず実るし、その通りに世界ではナイトメイヤーやナイトエコノミーが重要度を増している。いくつかのアメリカの美術館はDJなど夜に強い若い層を取り入れて、新しいボードメンバーの枠組みづくりも始めているんだよね。そういう時代のキーパーソンの一人が手塚さんであることは様々なメディアで語られてきたし、森のような都市型美術館には本来フィットするはず。

エリイ 森森ビル側は、六本木ヒルズの地権者たちと話すなかで、六本木ヒルズのガイドラインをつくったとの話も教えてくれて、それは再開発前の混沌とした雰囲気を変えるためのものだって言ってた。

卯城 ガバナンスは会社によって色々だと思う。僕らができることとしては、2点のみを伝えました。まずは職業差別にあたるかどうか、公正な第三者からの見解を調べてくださいと。その時点で差別だったら違憲だから企業としては是正しなきゃだし。ただ、差別は法以前に心の問題が大きいですよね。そうなると感情論も含まれるから冷静な判断は難しくなる。だからもうひとつ挙げたのは、僕らがこだわってきた都市の在り方についてだった。ヒルズというまちづくりには受け入れるものとそうでないものがある。再開発のセオリーが公共性や表現の自由よりも優先され、排除の論理を支えるなら、ジェントリフィケーションの問題をプロジェクト化してきた身としては何かしら考えざるを得ませんと伝えました。

 で、法的な解釈についてはその後返答をいただいた。弁護士への聞き取りからは、企業活動として法的な問題はないとのこと。ジェントリフィケーションについては、「第三者がそう言うこともあるんでしょうけども」という答えでした。

エリイ そんなこと言われてもしょうがない、みたいなね。

卯城 ジェントリフィケーションには功罪があるからね。治安の改善やLGBTQ+コミュニティの権利向上にも一役買ったのは事実だと思う。でも、さっき言ったナイトエコノミーの見直しや、排除アートなんかが議論されるいまは、森稔さん(森ビル元会長)が「クリエイティブ都市論」(リチャード・フロリダ)を絶賛した頃と時代が違う。森ビルが言う「文化都心」の象徴である森美術館は、企業の論理と美術の論理の間で難しい矛盾を抱えていると思ったんです。

エリイ いままでのやり方をみても曖昧模糊にされたくなかったし、会社というのは一体誰の意見で動いているんだろう、と思った。「会社」というと一見、実体がぼやける感覚がありますが、その向こう側にいるのは一人ひとりの人間です。私たちと同じ、人間です。判断する人がいるはずです。そう考えると、もどかしくて悔しかった。同じように美術館だって、自分で判断できるようにならなきゃいけない。メンバーの稲岡君は「森ビルの判断がそうだったとしても、美術館としての自律性はないんですか」と質問をしていました。

卯城 それが核心だったよね。展覧会全体は満足しているから美術館の現場には最大限の賛辞を送りたいけど、僕らはこの2年間ずっと、「森美術館が森ビルの一部署である」ことにも直面し続けてきた。その板挟みで起きたことが、Smappa!のロゴとスーパーラットの館内展示NGというどうしても譲れない2点だった。そもそもスーパーラットのオリジナルが引用していたデザインの著作会社はヒルズのテナントですしね。それでも美術館は、複数の弁護士への聞き取りから著作権法的にも黒ではないし、なんとか館内で展示できるようにとその会社と交渉してくれましたよ。1年近く説得が続きましたが、森ビルの考えもあって館内での展示はNGとなった。別会場しか道がなくなったわけです。であるなら、表現の自由はもとより美術機関はどうやって自律性を保つのかを議論する必要があった。その為のプロジェクトスペースにしませんか?と提案したんです。具体的には、「これを機に森美術館は財団化の議論を始めた方がいいのでは?」と投げかけました。

都内に設けられたミュージアム+アーティスト共同プロジェクトスペース

エリイ でもやっぱ森ビルのいち部署だから、面白いことや大胆なことができる部分もあるのは事実だよね。お金もそう。今回こんなに大きな展覧会ができたのは森ビルだからで、もし美術館が財団化したら、その余裕があったかどうだったかは分からないよね。休館日なくやれたり、22時まで営業できるのもその賜物だとおもうし、会田誠やうちらのこともこれだけ打ちだせる。そのなかで自律性の問題をどう改善していくのかっていうことはすごく重要な課題だと感じた。本当に、あるところから重要な意思決定を美術館は一切できなかったからね。

卯城 例えば福武財団は、福武家からの株の寄付でベネッセの大株主になることで自律性を担保しているそうです。石橋財団も創業者から寄付されたブリヂストン株の配当で予算を確保して、自律性アピールのためにブリヂストン美術館からアーティゾン美術館へと改名までした。すべてスポンサーや行政、親会社などから自由な文化活動を守るための仕組みですよね。

エリイ それを議論するはずの別会場も蓋を開けてみれば一日10何人しかたどり着けないという。美術館による周知やオペレーションには当事者意識を感じなかったし、その改善も私たちの要望への受動的な対応だったので、かたちになるのに2ヶ月もかかった。

卯城 そして、同時進行だったSmappa!の件は、「スペシャルサンクスや制作協力として名前を出すことは可能」だけど、協賛、即ちロゴの掲出はやっぱ無理だとなった。テキストはOKだけど絵になるとダメ、って美術的には興味深いけど、この辺りが水面化での交渉のひとつの限界でしたね。美術館との対話のなかで僕らからは、何かしらのアクションを起こすことが必要になります、と展示を閉める可能性も含めて伝えました。それを受けて再度話し合いが持たれたけど、結論は変わらず。「では……」と会議中に「改名します」と美術館に事前に通告し、世にリリースすることを話した。「えっ?」って感じの見たことのないリアクションでした。

森美術館の「Chim↑Pom展」には様々な企業の協賛ロゴが並ぶ
Chim↑Pom from Smappa!Groupのロゴ

エリイ 展示を閉めて終わりって面白くないよね。問題をプロジェクト化したり対話していくことが肝心じゃないかな。その対話ってなんだろうって心に問いかけていくと、最近竜太が言ってることがしっくりくる。あいトリ(あいちトリエンナーレ2019)のように、よく見かける対立して終わり、はもう古いと言っていて。そうだよなあって思ったんだ。対立するのって簡単なんだよね。消耗していくし、発展がない。バイブスも悪いし。だから、やっぱり展覧会はやった方がいい、と私は強く思い直した。やらないと対話にもならないし、何も無かったことになってしまう。やらない方が、簡単なんだよね。

卯城 この問題は森美に限ったことじゃないじゃないですか。職業差別やジェントリフィケーションの議論はアーティストと美術館のあいだだけの問題じゃない。だから、森美はもとよりすべての組織や社会に対して、「自分が何者か」を改名によって改めて宣言することにしたんです。

──ちなみにこのChim↑Pom from Smappa! Groupという名前はいつまで続けるつもりですか?

エリイ わからないですね。「当面のあいだ」と言うしかないですね。

卯城 でも、改名した限り、このインタビューのようにいろんなところで経緯を話していくことにはなるんだろうと思いますよ。既にテルアビブでのグループ展からは、改名を聞きつけて「新しいロゴを壁一面に印刷して改名のステイトメントと共に展示しないか?」と打診がありました。ローマとフランスのキュレーターからもポジティブなリアクションをもらい、「対立するのではなく、こんなに真摯な議論の開き方は初めて見た」という客観的な意見を聞くこともできた。立場によってはそんな風にも見えているんだと思う。

エリイ たぶん日本だけの話じゃないと思うしね。ちなみにSmappa! Groupはこれを機に、歌舞伎町に人が集まるキッカケになるようなリベラルアーツに特化したSmappa Academyっていうサロンをつくる予定らしい。とくに現代美術に力を入れたプログラムで。Chim↑Pomのこのアクションを実体化させなきゃいけないってSmappa!も思ってくれたんだよね。竜太は校長になるって聞いたけど。

卯城 そう聞いた翌日にならないって聞かされたけど(笑)。ていうか、僕らは名前を変えたけど、Smappa!も自分自身を変えるって素晴らしいよ。

 「スーパーラット」って、自分を変異させることで毒に耐性をつけて繁栄していくんですよね。今回、ヒルズの53階には、スーパーラットの金ぴかバージョン(《スーパーラット ハッピースプリング》)が展示されている。デザインの問題でオリジナルは排除されたけど、路地裏のネズミをヒルズの最上階に転送することは重要だった。それを考えたときに、「スーパーラット」というコンセプト自体はこの問題に対応できると気づいたんです。いっそこの「プレッシャーに対して変異」する、新たなデザインをつくろうと。改名もそういうことだと思うんです。Chim↑PomがChim↑Pom from Smappa!Groupへと変異していく。フレキシブルな存在の方が変われない存在よりも繁栄するのは──ネズミの生態系やコロナの変異を見ても──当然だと思うんです。だから森美術館にも財団化を投げかけた。

 もうひとつ重要なのが、駆除に対してネズミは戦ってないんですよね。戦ってるのはムキになっている人間だけ。すべての生命体の生存戦略は、力に対して自分を変異させるだけ。それによってスーパーラットはむしろ人間の環境に適応し続けている。「排除されても駆除されない」と別会場にステイトメントを掲げたけど、そこにはそんなニュアンスを込めました。だから改名を「プロテスト」という動きにも、ちょっと違和感はある。別に森美と戦っているわけではないことは、注意深く読み込めば理解できるはず。

ANOMALYの個展で展示された2つのスーパーラット
ANOMALYの個展で展示された2つのスーパーラット

──改名を「ポピュリズム」だと批判する声もありますが、そうではないと。

卯城 そういうコメントを見てみると、問題の本質については何も言ってないんですよ。職業差別の問題や、夜の仕事、ジェントリフィケーション……など、コメントするならそういうイシューを議論すべきかと思いますが、「ピカッ」(《ヒロシマの空をピカッとさせる》)の頃と変わらない僕らへの個人批判でしかない時点では、まだこれか、と受け手側の成長の乏しさを感じます。社会のトピックではなく個人攻撃というズレた論点でマツリを楽しんだり正義感に酔うのは、まるで2ちゃんねるの時代でコメント力が止まったままのように見えて僕には懐かしく映ります。だから、そういう穿った見方しかできない方には今も昔も反論はありません。そう見ようとしかできないその人の心の問題だとしか言いようがないので。

エリイ 穿った見方といえば、よく言われるのは「売名行為」って言葉だけど。何かやると目立っちゃうときもあるけど、別に目立ちたくないし。売名とかしたくない。そう言ってる人に言いたいのは、あなた何かをやってみて。

卯城 それでも名前変えるなんてなんだか生まれ変わるような新鮮さはあるよね(笑)。

エリイ Chim↑Pomって名前はどの角度からみても完璧なんだけど、変えたいなとは思ってた(笑) 。 でも結局今回、Chim↑Pomはそのまま残ってるし、むしろ長くなった!

卯城 本末転倒(笑)。そういえば安倍夫妻の来館時にエリイが案内したときのスリーショットが話題になったときにも思ったけど、やっぱり意図や背景を全部すっ飛ばしたコメントがあふれ返ってましたよね。写真のインパクトに反射しているだけなので、イメージの力ってすごいなと思ったけど、一瞬で過ぎ去るから議論とは縁遠い。しまいには事実誤認まで飛び交って美術のプレイヤーもそれに乗っかり騒ぐ始末(笑)。

──改名の件とはズレるかもしれませんが、あの写真の経緯は気になりますね。

エリイ まず、私はずっと《気合い100連発》を安倍さんに見てほしかったんだよね。「東京2020」の青焼きもそうだし、今回Chim↑Pom展で展示されている作品の一部と安倍政権は同じ時代で呼応しあっている。私個人としては、ずっと見てもらいたいと思ってた。そうしないと話にならないっていうか。

卯城 だから呼んだんですよ、エリイが。

エリイ 見に来てくれて、作品の解説をしたっていう。こんなに多岐にわたる作品を一同に見れる機会はなかなかないし。彼は「Chim↑Pom作品の当事者」なわけですよ。だから見てもらうってことがすごく大事と私は思ってる。うちらはChim↑Pom from Smappa!group ですよ。私はアートに対してつねにプロフェッショナルでいたいし、アートに愛されていると思い込んでいる人間だということをお忘れなく。

「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」展示風景より、中央が《LEVEL 7 feat.『明日の神話』》(2011)
「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」展示風景より、「東京2020」の青焼き

卯城 うちらはオルタナティブスペースやアートフェア、芸術祭、美術館っていういろんなシーンと関わり続けてきた。そんな節操のないアーティストは珍しいけど、アンダーグラウンドでできることとメインストリームでできることは違うんですよね。例えばキタコレでは《気合い100連発》の検閲バージョンを発表し、キャプションでは安倍政権にも触れた。だけど作品を安倍さん本人に見せるなんて、森美術館での回顧展だからこその可能性なんです。リベラルだと自称する人たちは、安倍さんにChim↑Pomの作品を直視してもらうことまでをも否定する先に、いったいどんな分断社会を生んでしまうのか、そのことも冷静に想像してほしい。

エリイ みんなの心の中にChim↑Pom from Smappa!groupがいるんだよ。その像を自分のいいように使うのさ。

卯城 この場合、エリイをひとつの価値観に当てはめ……ってメンバーの僕ですらいまだに行動も読めないのに(笑)。ていうか、おかやん(岡田将孝)ともっちゃん(稲岡求)含めてメンバーの半分はいまだに理解不能だわ(笑)。まあ、今回の改名は「自分たちは自分たちなんだ」っていう態度表明なわけです。人が何を言おうが、森美術館がどうであろうが、Chim↑PomはChim↑Pom from Smappa!Groupですっていうことでいい。「自分たちは独自なんだ」っていうことを表明し続けていれば。

エリイ 展覧会の会期もあと少しあるから、見に来てほしい。私は会場をうろついてるから、わからないことや聞きたいことがあったら、声をかけてくれたら作品の解説できる!見に来てくれた人と道やトイレでLINE交換したりしてるんだ。展覧会ってほんとに楽しい!

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