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ロニ・ホーンインタビュー:作品体験の半分は観客のなかに、もう半分は見えているもののなかにある

現代アメリカを代表するアーティストのひとり、ロニ・ホーン。日本の美術館での初個展となった、ポーラ美術館(神奈川)での「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」展に際し、孤独や自然、文学といった発想の源泉について聞いた。

聞き手=石川卓磨

ロニ・ホーン 都内にて 撮影=高見知香

視点と目線

──日本初となる大規模な個展は、どのようなプロセスでつくられたのでしょうか。また、ポーラ美術館の環境に影響を受けたり、美術館と協働されたりした部分などはありましたか?

ホーン このような展覧会が日本で開催できることを、大変楽しみにしてきました。まず箱根は、地質学的にも景観的にも素晴らしい場所です。私は幼い頃から地形や気象に多くの喜びを感じてきました。そして、ポーラ美術館は国立公園の中に立っているので、周囲の環境や景観に極力影響を及ぼさないための構造的配慮によって、展示空間がすべて地下に置かれています。この環境と設計の関係性から美術館をある種の「井戸」として位置づけられると考えました。とくにこの特徴的な環境と美術館の設計が気に入りました。この展覧会は、美術館との共同作業を通してつくられていきました。特にキュレーターである鈴木幸太さん(インタビューに同席)との協働で、展示する作品、作品間における配置のバランス、展示方法を決めていきました。

鈴木 初めに、私たちのほうから「水」というテーマを提案しました。切り口をシャープにしてしまうことで、作品の枠組みを狭めてしまわないように、テーマに広がりがあるものを選びました。なぜなら彼女の作品には、一貫したコンセプトがありつつも、相反する部分があり、それによって多様なバリエーションがつくられているからです。その在り方が水に似ている、という解釈は可能である。そして、東洋的な水の考え方は、西洋とは少し異なり、無常観や、人間の心情を表したりすることもある。東洋と西洋がクロスするところで、彼女の作品はどう見えるのか、という方向で議論が進みました。そこから彼女がいくつかタイトルの候補を挙げてくれて、そのなかのひとつが今回のタイトルでした。

This is Me, This is You(部分) 1997-2000 96点のタイプCプリント
Photo by Bill Jacobson (C) Roni Horn Courtesy of the artist and Hauser & Wirth

──本展のタイトルとも関連するかもしれませんが、「あなたは天気」シリーズや、今回出品されていない《This is Me, This is You》などに顕著に見られる特徴に関する質問です。これらの作品において、「わたし」や「あなた」などの代名詞が、被写体、作者、観者の誰を指しているのか、特定することは難しく、つねに交換可能であるように感じます。これはあなたの一貫したコンセプトのひとつだと思いますが、どのようにお考えですか?

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