【ギャラリストの新世代】
CAGE GALLERY 佐藤拓真

CAGE GALLERYのギャラリースペースは、道路に面した窓枠。2017年のオープンから、若手作家を中心に領域横断的な作品を紹介してきたこのスペースは、「枠組み」をひとつのキーワードに活動を行ってきた。ギャラリーの活動と展望について、ディレクターの佐藤拓真に話を聞いた。

ギャラリーオープンに際して改装した窓枠は11時から20時まで点灯。立体作品などにも対応できるよう、奥行きを持たせている Photo by Chika Takami

枠組みを自由に超えて

様々な意味を持つ「CAGE」

 2017年4月、恵比寿駅と広尾駅の中間付近にあたる場所にCAGE GALLERYはオープンした。そこはギャラリーといっても、展示空間は建物の外にある2つの窓枠のみ。窓枠の照明が消灯している時間を含め、24時間作品を見ることができる。このユニークなスタイルをとるこのギャラリーを運営するのは、ファッションブランド「Hender Scheme(エンダースキーマ)」で知られる株式会社laicoS(ライコス)だ。CAGE GALLERYの建物も、同ブランド直営店の正面に位置している。「laicoSの代表でHender Schemeデザイナーの柏崎亮が“自由に遊べる場を、持続可能な形でつくりたいね”と。その発言をきっかけにCAGE GALLERYをスタートさせました」と、laicoSに所属し、ギャラリーの企画・ディレクションを行う佐藤拓真は話す。

CAGE GALLERY 外観

 「CAGE GALLERY」の「CAGE」は「鳥かご」「枠」「掲示」などの意味を持たせているという。「道路に面した場所なので、地域の掲示板のように、取り留めなく淡々と作品を展示したい。同時に、ものごとの枠組みそのものを考える場になればという意図を込めています」。

物事の多面性を示していく

 ギャラリーのオープニング展では、写真を通して事物と事物のあいだ、ズレ、違和感にアプローチする矢島陽介を紹介。その後、美術家、批評家、キュレーターとして活動する原田裕規、建築家らと協働的な作品制作を手がけ、美術やデザインなどの表現領域を曖昧化する写真作品を手がけるGottingham。そしてペンによるシンプルな線を基調に、寓意的でユーモアと感傷の漂うドローイング、アートブックなどを制作してきた平山昌尚など、領域横断的な活動を行うアーティストの作品を多数展示してきた。「あらゆる物事は多面的で、それに対する解釈も様々であればと思うので、枠組みやジャンルを超えた作品制作をしているアーティストを選んできました」。佐藤自身も、会社員であると同時にギャラリストを務め、アーティストとしての活動も行なっている。「CAGE GALLERYは、ライコスが会社としての態度やスタンスを表明している場であり、私が企画するギャラリースペースであり、アーティストとしての自分のプロジェクトのひとつでもあるのかもしれない。最近は、そう考えるようになりました」。2月3日から3月25日にかけ、Gottinghamキュレーションにより、佐藤の作品展示も行われる。

2017年の原田裕規「作者不詳 #1」展では、「作者不詳」と「平面」を主題に、2点1組の作品を展示(撮影=原田裕規)

予定調和ではない展示を目指して

 佐藤はギャラリーの展望について次のように話す。「例えばlaicoSのリソースを使って、商品でもあり作品でもあるとか、あるいは作品展示でもあり広告でもあるなど、グレーな領域へのアプローチを試していきたいです」。CAGE GALLERYを知り、作品を見るために場所を訪れる来場者に比べ、通勤や通学などで偶然前を通りかかる人々が圧倒的に多いというギャラリーの性質を生かした企画が、今後の方向性のひとつだ。「CAGE GALLERYは限られたスペースのなか、自由に遊べる場。アーティストがその特性を各々で解釈し、通常のホワイトキューブではできないことをここで試せる、自由で予定調和ではない展示を行なっていきたいです」。

もっと聞きたい!

Q.注目のアーティストは?

 三嶋一路(いちろ)さんです。三嶋さんはプレハブ一棟分の資材を使い展示壁を制作、それが支持体として機能している状態が意味を持つ、「“A”であると同時に“B”でもある」という作品への向き合い方が面白い。

三嶋一路 Work, fabricate, built and show 2017

Q.思い出の一品は?

 建築家、レム・コールハースの著書『錯乱のニューヨーク』は、僕が大学院で美術研究をする際に読み深めた一冊、建築にとどまらない活動や思想に大きな影響を受けました。とらえがたいこの本からは、作家としてのコールハースの意志表明のようなものも感じます。

 

『美術手帖』2018年3月号「ART NAVI」より)

編集部

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