さいたま国際芸術祭2020
2016年に来場者36万人を記録した「さいたまトリエンナーレ」。同プロジェクトを引き継ぐかたちで開催されるのが「さいたま国際芸術祭2020 -Art Sightama-」だ。テーマとして、さいたまの自然、その土地に生まれる風景やアートワークなど、重層的な意味を持つ「花 / flower」を掲げる。
参加作家は、篠田太郎、アラン・カプロー、フランク・ブラジガンド、川井昭夫、テリ・ワイフェンバックほか34組。作品は、大きく分けて旧大宮区役所(メインサイト)、旧大宮図書館(アネックスサイト)、そしてまちなか(スプラッシュサイト)で展開される。
メインサイトでは、「記憶の継承」をテーマに活動する平川恒太が制作する区役所時代の備品を素材とした立体作品や、日本フィルハーモニー交響楽団やNHK「おやすみ日本 眠いいね!」など、通常の芸術祭ではあまり見かけないランナップも。アネックスサイトでは、灰原千晶、カニエ・ナハ、マーク・テらのほか、先行プロジェクト「さいたまスタディーズⅡ」や公募キュレーターによるプログラムを展開。スプラッシュサイトでは快快(ファイファイ)、長島確、最果タヒらが参加するほか、浦和駅周辺で約250組の作家が参加する「美術と街巡り事業」を2期に分けて行う。
また、3月の開幕に先立ち、様々なジャンルの講師によるプログラム「さいたまアートセンタープロジェクト」や、さいたまの多様な魅力を掘り起こすワークショップ「CIRCULATION SAITAMA(サーキュレーションさいたま)」などのプロジェクトがすでに始動している。こちらもあわせてチェックしたい。
さいたま国際芸術祭2020
会期:2020年3月14日〜5月17日
会場:旧大宮区役所、旧大宮図書館、大宮盆栽美術館、鉄道博物館、彩の国さいたま芸術劇場、埼玉県立近代美術館、うらわ美術館、さいたま市文化センター、岩槻人形博物館(開館予定)、その他市内各所
実施回数:1回目(前回は「さいたまトリエンナーレ2016」)
ディレクター:遠山昇司(映画監督)
参加アーティスト:篠田太郎、アラン・カプロー、フランク・ブラジガンド、川井昭夫、テリ・ワイフェンバック、最果タヒ、菅原直樹/OiBokkeshi、日本フィルハーモニー交響楽団ほか
房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020
千葉県の中央に位置する市原市は、成田と羽田の両空港からのアクセスもよく、都心からほど近い場所にありながら、田園や里山、トロッコ列車が菜の花の中を走る風景などどこか懐かしい日本の姿をもつ。「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020」は、市原市の歴史・文化・自然・人の暮らし・食・スポーツなど、地域の持つ様々な資源を現代アートと融合し、より魅力的な「いちはら」を再発見する試みだ。
今年は初回以来2度目のディレクションとなる北川フラムを迎え、「房総の里山から世界を覗く」をテーマに展開。小湊鉄道の操車場がある千葉・市原市の五井駅を起点に、牛久、平三、高滝、里見、月崎、月出、白鳥、そして養老渓谷を会場とする。100年の歴史を持つ小湊鉄道沿線をめぐりながら、各地の作品を見ることができるのが今回の大きな特徴だ。
また、今回のいちはらアート×ミックスでは、「駅舎プロジェクト」として西野達が上総久保駅を「ホテル」作品に変えるほか、複数の駅が作品の舞台に。東京から約1時間、首都圏とは思えない非日常的な雰囲気のなかでアートを楽しむことができる。
房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020
会期:2020年3月20日〜5月17日
会場:小湊鉄道を軸とした周辺エリア
実施回数:3回目
総合ディレクター:北川フラム
参加アーティスト:西野達、冨安由真、エルモ・フェアメイズ、指輪ホテルほか
北アルプス国際芸術祭2020
日本列島の中心にあたる長野県大町市は、3000メートル級の山々が連なる北アルプス山脈の麓に位置し、水によって育まれた自然と生活文化をもつ。「北アルプス国際芸術祭」は、その豊かな地域資源をアートの力で世界に発信し、地域再生を目指すプロジェクトだ。
2017年に続き2回目の開催となる本年は、総合ディレクターに北川フラム、ヴィジュアル・ディレクターにファッションブランド「ミナ ペルホネン」のデザイナーである皆川明を迎える。開催エリアは、北アルプス山麓の自然と文明が交差する源流エリア、かつて宿場町として栄えた市街地エリア、ダムの歴史や造形を味わえるダムエリアなどの5つに分かれ、北アルプスの様々な魅力が体感できる構成となっている。
参加作家は淺井裕介、川俣正、目など注目のアーティストをはじめ、国内外から約35組が参加。北アルプスの水・木・土・空と、世界のアート作品の爽やかな調和を楽しむことができる。
北アルプス国際芸術祭2020
会期:2020年5月31日〜7月19日
会場:長野県 大町市
実施回数:2回目
総合ディレクター:北川フラム
ビジュアルディレクター:皆川明
参加アーティスト:青島左門、淺井裕介、川俣正、木村崇人、平田五郎、布施知子、目、持田敦子、カン・ヒジュン、ジミー・リャオ、李洪波、マナル・アル・ドワイヤン、マーリア・ヴィルッカラほか
東京ビエンナーレ2020
まだ戦後の復興期にあった1952年から、18回にわたって開催された「日本国際美術展(東京ビエンナーレ)」。第10回の「人間と物質」は、のちの美術史に大きな足跡を残した。その第10回東京ビエンナーレから50年後となる2020年、東京都心の北東部を舞台に、新たな試みとして「東京ビエンナーレ2020」が開催される。
この国際展の最大の特徴は、行政主体ではない、民間主導の国際展であること。小池一子(十和田市現代美術館館長)と中村政人(アーツ千代田3331統括ディレクター)が共同代表を務める、東京ビエンナーレ市民委員会が主催する。全体のテーマは「純粋 × 切実 × 逸脱」。このテーマのもと、「アート×コミュニティ」をキーワードに、自分たちの文化を、自分たちの場所でつくっていくことを目標としている。
同祭は、2018年秋に開催された「WHY Tokyo Biennale? 東京ビエンナーレ2020構想展」をはじめとするプレイベントにも力を入れ、伊藤ガビン、スプツニ子!などの注目作家も参加。企画段階から継続的にその内容や思考を公開・共有してきたプロジェクトが、本会期にどう実現するのか注目したい。
東京ビエンナーレ2020
会期:2020年7月3日〜9月13日(予定)
会場:千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがる東京北東エリア
実施回数:1回目
参加アーティスト:未発表
ヨコハマトリエンナーレ2020
まもなく初回から20年の節目を迎える「ヨコハマトリエンナーレ」。今回初めて国外からアーティスティック・ディレクターを迎え、トリエンナーレは新たな姿へと発展しようとしている。
ディレクターに選ばれたのは、インドのニューデリーを拠点に活動するアーティストコレクティブ「ラクス・メディア・コレクティヴ」。タイトルは「Afterglow - 光の破片をつかまえる」に決定した。「Afterglow(残光)」とは、私たちが日常生活の中で知らず知らずのうちに触れていた、宇宙誕生の瞬間に発せられた光の破片を指す。ラクス・メディア・コレクティヴは、人間の営みを「破壊/毒性」と「回復/治癒」の連続性ととらえ、有毒なものを排除するのではなく、共存する生き方がいかに実現できるのかをトリエンナーレを通じて問う。
会期前には「エピソード」と呼ばれる短期間のイベントを断続的に実施。アーティストやキュレーター、映像制作者、ダンサー、ミュージシャン、パフォーマーなどを招いて新たな対話を生み出していく。2019年11月に行われた「エピソード00 ソースの共有」を皮切りに、香港、ニューデリー、ヨハネスブルグと移動し、最終的には会期中に横浜で本格的に展開される予定だ。
参加アーティスト第1弾として発表されているのは、日本人は新井卓、川久保ジョイなど。海外アーティストはイヴァナ・フランケ、アンドレアス・グライナー、アントン・ヴィドクルのほか、日本では初めての作品発表となる8名が選出された。横浜を中心に、世界を巻き込むトリエンナーレの新たな展開に注目したい。
ヨコハマトリエンナーレ2020
会期:2020年7月3日〜10月11日
会場:横浜美術館、プロット48
実施回数:7回目
アーティスティック・ディレクター:ラクス・メディア・コレクティヴ
参加アーティスト:新井卓、飯川雄大、飯山由貴、岩間朝子、川久保ジョイ、佐藤雅晴、新宅加奈子、田村友一郎、イヴァナ・フランケ、アンドレアス・グライナー、アントン・ヴィドクルほか
ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO
2020年秋、広島県では初となる大規模な現代美術の国際展「ひろしまトリエンナーレ」が開催される。
舞台となるのは、広島県東部の備後地域。三原市、尾道市、福山市の各中心部と、瀬戸内海の百島や小佐木島といった島しょ部が会場となる。尾道市立美術館などの公共施設に加え、三原市の閉館した映画館「CINE PATIO」や、1938年に建造された「旧三井住友銀行尾道支店」など地域住民にとって親しみのある場所も活用される。
総合ディレクターの中尾浩治によれば、同祭は国内作家の比率がほかの地域芸術祭よりも高く、日本の現代芸術の魅力をより強く世界に発信するという。具体的な参加作家については、2020年夏にかけて順次発表される予定だ。
ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO
会期:2020年9月12日〜11月15日
会場:CINE PATIO、三原市ゆめきゃりあセンター、小佐木島、尾道市立美術館、旧三井住友銀行尾道支店、尾道市街地、ART BASE百島、ふくやま美術館、広島県立歴史博物館ほか
実施回数:1回目
総合ディレクター:中尾浩治
参加アーティスト:未発表
札幌国際芸術祭2020
今年で3回目となる「札幌国際芸術祭」。過去2回は夏に開催されていた同祭だが、今回は初の冬季開催となる。テーマは「Of Roots and Clouds(オブ ルーツ アンド クラウズ): ここで生きようとする」。大地に張る根(roots)と大空に浮かぶ雲(clouds)は、北海道の広大な自然を示すと同時に、先祖の記憶や過去の出来事、テクノロジーが生み出した見えないネットワークという意味も内包する。
また、今回はディレクション体制を一新。複数のディレクターによるチーム制でプロジェクトを進行する。統括ディレクター兼現代美術の企画ディレクターを務めるのは、北海道立近代美術館での勤務経験(1982~86)もあり、過去には「横浜トリエンナーレ2005」のキュレーターなどを務めた、天野太郎。
札幌市は世界で2都市目、アジアで初めての「メディア・アーツ都市」でもあることから、メディア・アートにも注力。担当ディレクターに、1994年からWROメディア・アートセンター財団(現代美術、メディア、コミュニケーションを専門とするポーランドの民間公益団体)の一員として活動するアグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカを迎える。さらに、コミュニケーションデザインディレクターには、アートの翻訳・通訳チーム「Art Translators Collective」主宰の田村かのこが就任した。
人口200万人規模の大都市でありながら、冬の降雪量は5メートルを超える厳しい自然環境を持った札幌市。この都市環境ならではの内容に期待したい。
札幌国際芸術祭2020
会期:2020年12月19日〜2021年2月14日
会場:札幌芸術の森、札幌市民交流プラザ、北海道立近代美術館、mima 北海道立三岸好太郎美術館、札幌大通地下ギャラリー500m美術館、札幌市資料館、モエレ沼公園
実施回数:3回目
企画ディレクター(現代アート担当)/統括ディレクター:天野太郎
企画ディレクター(メディアアート担当):アグニエシュカ・クビツカ=ジェドシェツカ
コミュニケーションデザインディレクター:田村かのこ
参加アーティスト:未発表