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EXHIBITIONS

ザ・マスターズ・トゥールズ・ウィル・ネヴァー・ディスマントル・ザ・マスターズ・ハウス (The Master's Tools Will Never Dismantle the Master's House、主人の道具で主人の家は壊せない)

KAG
2025.02.01 - 04.19

サエボーグ Slaughterhouse 2019 ©︎鞆の浦ミュージアム 撮影:高瀬智司

 KAGで「ザ・マスターズ・トゥールズ・ウィル・ネヴァー・ディスマントル・ザ・マスターズ・ハウス (The Master's Tools Will Never Dismantle the Master's House、主人の道具で主人の家は壊せない)」が開催されている。

「私たちは、この社会が定める『受け入れられる女性』の輪の外に立っている。差異という坩堝で鍛えられた私たち―貧しい者、レズビアン、黒人、年配者— は知っている。生き抜くことは学問的な技能ではないということを。

 生き抜くとは、不人気で時に嫌悪されながらも、孤独に立つことを学ぶことなのである。私たちすべてが繁栄できる世界を定義し追求するために、構造の外にいるとされる他の者グループの人たちと共通の大義を見出すこと、私たちの違いを受け入れ、強みに変えるのを学ぶことなのだ。

 なぜなら、主人の道具で主人の家を壊すことは決してできないから。一時的に主人の土俵で勝つことはできても、真の変革をもたらすことは決してないだろう。このことは、主人の家を唯一の支えと定義し続ける女性たちにとってのみ脅威なのだ」(オードリー・ロード、展覧会ウェブサイトより)。

 本展のタイトル「主人の道具で主人の家は壊せない」は、詩人・活動家オードリー・ロードのスピーチをもとにした著書から引用。ロードはシモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』の出版30周年を記念する学術会議に招聘された際、会議の出席者の大半が白人女性だったことを受け「この社会が定める『受け入れられる女性』の輪の外に立っている」者のひとりとして、白人中心主義フェミニズムに対する批判的なスピーチを行った。ロードはそこで、差異を受け入れ、それを自らの利点へと転換し、連帯し、フェミニズム運動内における人種主義、異性愛主義、エリート主義を内破しない限り、家父長制を破壊することができないと説き、さらにボーヴォワールを引用し「私たちが生きるための力と行動の理由を導き出すのは、私たちの生活の真の状況を知ることである」と指摘。人種差別や同性愛嫌悪は、この時代に生きる自分たちすべてにとって現実の状況であり、自分自身の内なる深い知の領域に触れ、そこに存在するあらゆる差異に対する恐怖や嫌悪感に触れてみるべきであり、それこそが個人的なことが政治的なこととして、自分たちのすべての選択を照らし始めることができるのだと結んだ。

 本展では、言語や文化間に生じる親密性と暴力性を探究し、世界がよって立つ支配的な観点を混乱させ、純粋性や真正性という過去を彩る近代の神話を暴こうと試みた4名のアーティストの作品を紹介。世界的に蔓延する文化的バックラッシュにより、あらゆる文化が家父長制資本主義やナショナリズムへと揺り戻されるなかで、複数の視点を取り入れた表現を通じて、二元論的な思考に揺さぶりをかける可能性を追求する。

 出展作家は、カルプ・リンジー、ミミ・チ・グエン、サエボーグ、ジェニー・シムズ。