EXHIBITIONS

近藤大祐「Pathways of Memory」

2024.11.01 - 11.16
 GALLERY TOMOで、近藤大祐による個展「Pathways of Memory」が開催されている。

 近藤大祐は1993年静岡県生まれ。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院芸術専攻を修了後、京都にアトリエを構えて制作を続けている。近藤は注射器から抽出した独自の物質感のある色層で、日常生活のなかで出会った景色を絵画にしてきた。

 以下、アーティスト・ステートメントとなる。

「私の作品タイトルに刻まれた日付は、単なる制作日ではありません。それは、作品一つひとつが私自身の記憶の断片そのものであることを示す、記憶の旅程表なのです。都市の脈動、空気の匂い、光と影の戯れ。私の五感を刺激した、あの日、あの瞬間の記憶の断片が、注射器を通して、もうひとつの現実としてキャンバス上に立ち現れます。

 すべての創作の旅は、現実の風景の撮影から始まります。しかし、コンピュータ上で再構築された風景は、たんなる記録ではありません。注射器から滴り落ちる絵具の一滴一滴によって、私の主観的な記憶と感情の色彩に染め上げられていくのです。緻密に重ねられた色彩の層は、時間軸や感情の揺らぎを閉じ込めた、記憶の化石として存在していきます。

 俯瞰視点で描かれた街並みは、まるで記憶の迷宮。緻密な色彩の層は、時間軸や感情の揺らぎを留めた、記憶の堆積そのものです。そして、注射器から滴り落ちる絵具の一滴一滴は、鮮烈な記憶の断片としてキャンバスに定着し、現実には存在しない、もうひとつの現実を描き出します。

 風景をたんなる視覚的な対象としてとらえるのではなく、私が体験した時間や感情の『道筋』として表現すること。訪れた日付という客観的な情報と、記憶にもとづく色彩やテクスチャという主観的な表現。そのふたつが融合することで、現実の風景を超越し、感情の奥行きと時間の流れを視覚化した、新しいリアリティが生まれるのです。

 絵画というイリュージョンを通して、私は記憶と現実、そして主観と客観のあいだを自由に行き来します。一見抽象的に感じられる表現も、私にとっては現実と地続きの、リアルな感情の表れなのです。絵具の物質感が織りなすマチエール、側面にまで展開される絵具の広がり。それらは平面を超え、私の内面世界をより立体的に表現する重要な要素となっています。

 本展『Pathways of Memory』は、私自身の記憶の旅路であると同時に、鑑賞者一人ひとりの記憶を呼び覚ますためのinvitationでもあります。写真では決して伝えきれない、生で見た時の作品のマチエール、そしてそこから立ち上る記憶の断片を、ぜひ会場で体感してください」(展覧会ウェブサイトより)。