EXHIBITIONS

石川祐太郎「GHOST」

LAID BUG
2024.10.04 - 10.26

メインヴィジュアル

 LAID BUGで、石川祐太郎による個展「GHOST」が開催されている。

 石川祐太郎は、少年期をアメリカで過ごし、東京でファッションを学んだあと、2018年より制作活動を開始。石川の作品において、重要なマテリアルとなっているのが、衣服である。"着る"という目的以外の側面に興味があるという石川がまず着目したのは、「衣服についたにおい」。香水や煙草など、所有者の存在を感じさせるにおいが染み付いた衣服は、パーソナルな記憶の象徴であると考え、ワックスで固形化することでにおいを閉じ込め、カーヴィングを施し、立体作品に昇華した作品を発表。

 2023年5月にLAID BUGで開催した個展「Punch-Drunk」では、シグネチャーとなった衣服とワックスを用いた手法を拡張させ、自身初となるインスタレーション作品を発表。2024年2月に西麻布WALL_alternativeで開催されたグループ展「Saturday Night Once More」ではドローイング作品を発表するなど、新しい表現にも意欲的に取り組んでいる。

 本展のタイトル「GHOST」は、石川によって名付けられた。日本では、幽霊は重要なメッセージを伝える存在とされ、"丑三つ時"や"逢魔時"、"辻"といった特定の時間帯や領域に現れると信じられてきた。こうした瞬間や場所は「境界」に存在するとされ、過去と現在が交錯し、見えないものが現れる神秘的な力が宿っていると考えられている。

 石川は、こうした伝承や信仰にもとづきながらも、現代的な視点で「境界」を視覚化しようと試みている。日常生活のなかで、ふとした瞬間に自分自身とはまったく異なる時間軸や世界線の人や物事に思いを馳せるとき、石川は無意識下で何かの「境界」に触れたと考えるという。衣服に付いた自分以外の髪の毛や汚れ、海の中で身を潜める戦争の遺物。断片的な物質、音、気配などが過去と現在、そして未来をつなげる架け橋となって何かを伝えようとしていると考える石川は、ファブリックやワックスを選定し、自らパターンを引いて縫製し、かたちづくることで、その存在を独自の視点で表現している。

 今回は、ファブリックを用いた立体作品に加え、ワックスを用いた彫刻作品を発表。新たな表現を模索し、つねに進化し続ける石川の世界に触れてみてほしい。