2022.12.2

3年ぶりの再開。福岡アジア美術館のAIR成果展「境界を縁どる─⽯、呼吸、埋⽴地」が開催へ

福岡アジア美術館が3年ぶりに再開したアーティスト・イン・レジデンス事業。その成果展「境界を縁どる─⽯、呼吸、埋⽴地」に、3名のアーティストが集う。会期は年12⽉3⽇〜12⽉11⽇。

制作スタジオでのアーティスト。左からソー・ソウエン、⼤⻄康明、ゴン・ジエション(耿傑⽣)
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 アジアの近現代の美術作品を系統的に収集し展示する唯一の美術館として知られる福岡アジア美術館。同館が今年度、新型コロナウイルス拡⼤防⽌のため延期していたアーティスト・イン・レジデンス事業を3年ぶりに再開した。その成果展「境界を縁どる─⽯、呼吸、埋⽴地」が、12⽉3⽇〜12⽉11⽇の会期で行われる。

 今年度は滞在期間を第1期から3期に分けており、海外、⽇本、福岡から8組9名のアーティストが滞在制作を実施。本展は、その第2期に当たるアーティスト、⼤⻄康明、ソー・ソウエン、ゴン・ジエション(耿傑⽣)の3名が、9⽉中旬から約3ヶ月間、福岡に滞在し、福岡の⾵⼟や歴史を調べ、制作した成果展となる。

 ⼤⻄康明は1979年⽣まれ、⼤阪府在住。空洞や余⽩など⽇常には意識されないような「間」や「境界」を多様な素材を⽤いて再構築し、⼈と⾃然などの関係を問う作品を制作している。近年では、新しく銅箔を⽤いて河原全体をトレースする作品《⽯と柵》などを発表してきた。

 滞在制作作品となる《境の⽯ 室⾒川》(展⽰会場:Artist Cafe Fukuoka・福岡アジア美術館)は、室⾒川の河原の⽯を銅箔で型取りしたものを空間に配置。時間の堆積を象徴する⽯の形態を借り、銅箔で覆い⽊槌で叩いて⽯の形をトレースする⾏為から、表と裏、内と外、虚と実、時間や空間をとらえるものだ。

⼤⻄康明の制作風景より

 ソー・ソウエンは1995年⽣まれ、北九州市在住。⾃らのアイデンティティーが何によって成り⽴っているかを、⾝体との関わりにおいて追究しており、肖像写真からドットのみを抽出した絵画シリーズや、⾃らの⾝体を縁取った絵画などを制作するほか、近年では、映像作品やパフォーマンスにも表現の領域を広げている。

 滞在制作作品となる《Bellybutton and Breathing─お臍(へそ)と呼吸》(展⽰会場:Artist Cafe Fukuoka)は、インスタレーションでありパフォーマンス。⼈の出⽣と深く関わりのある「お臍」と「呼吸」に着⽬し、「わたし」や「わたしたち」の性質を検討するものとなる。またソウエンは、《エグササイズ》(展⽰会場:福岡アジア美術館)も発表。⽣命の象徴である卵を⾝体のくぼみに挟み、落とさないように時を過ごすことで、「わたし」と「世界」の間にある隔たりや、暴⼒性について考察するという。

ソー・ソウエンの制作風景より

 ゴン・ジエション(耿傑⽣)は1989年⽣まれ、台湾在住。台湾や東アジアの⼈々の習慣、あるいはその⾝体性に注⽬して、オブジェやインスタレーションなどを手がけている。

 本展では、「⼟地が埋め⽴てられたあと、⽔はどこへいくのか?」という問いから始まった《⽔循環 ウォーターサイクル》(展⽰会場:本庄湯/Artist Cafe Fukuoka/福岡アジア美術館)を制作。⽔の湧き出る場所や量感、変化する形態を作品の重要な要素として据え、浴槽に浸かる⾏為や埋⽴地を、⽔の移動という現象と関連づけてとらえた作品となる。

ゴン・ジエション(耿傑⽣)の制作風景より