EXHIBITIONS

伊藤彩「PASSING WIND」

伊藤彩 I AM DONE 2024 Photo by Koji Nagaoka © Aya Ito, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 小山登美夫ギャラリー六本木で、伊藤彩による個展「PASSING WIND」が開催されている。

 オレンジ、赤、緑、紫、黄色など人工的なネオンのような暗く鮮やかな色彩の渦。傑出した構成力の、時空がねじれた背景。飄々とした人かなにかが巨大化、矮小化されたり、浮いたりと、伊藤作品を観るとけだるい無重力の空間を覗き込んでいるような不思議な感覚を覚えさせる。

 伊藤は自身の作品は「無意味なつながり」「渋谷のスクランブル交差点での人々が行き交い、一人ひとりの人生が交差する様子」のようだと語る。主人公たちや景色に脈略はなく、伊藤の妄想が妄想を呼んだ、偶然の出会いの連続。その異物同士のハレーションは不条理な夜の夢を彷彿とし、伊藤作品とシュルレアリスムとのつながりを感じさせるかもしれない。

 本展では、新作ペインティングと立体作品を発表。

 また、巨大スリーピングストーンも制作し、会場に設置する予定だ。来場者は思い思いに寝そべり作品を鑑賞でき、俯瞰で見ると、その様子は伊藤作品の一部として参加しているように感じられるだろう。