EXHIBITIONS

Simone Engelen / 27 Drafts

2024.06.14 - 07.14

©︎ Simone Engelen

 POSTで、オランダ人写真家 シモーネ・エンゲレンによる個展「Simone Engelen / 27 Drafts」が開催されている。

 アムステルダムを拠点に活動するシモーネは、作品制作を通して、心を静める方法を探求。岡山にある臨済宗の禅寺、曹源寺を訪れた経験から、静寂をとらえ、呼び起こすことを作品の目的とし、立ち止まって存在の本質に触れるよう観者に問いかける。

 今回の作品集は、デザイナーのハンス・グレメンが主宰する出版社、Fw:Booksから刊行された。アメリカで高校生活を送っていたシモーネは、在学中に2人の男性から性的虐待を受ける。このことは、彼女のその後の人生において、人との関わり方を変えただけではなく、親密さという概念に対しての認識が再構築されたきっかけになったという。

 作品集は、自分の身体、アイデンティティ、女性らしさと向きあうという内なる戦いを視覚的に表現した一冊になっている。羞恥心から始まったその戦いは、依存症や感情のコントロール問題の対処法を見つけるきっかけにもなった。2022年、自身の母親と一緒にアメリカに戻り、彼女はこの旅の終結を見つける。カメラを使って被写体と距離をとりながら、長いあいだ避けてきた会話に参加。タイトルの「27 Drafts」は、シモーネが加害者に向けて書いたものの、送られることのなかった手紙にちなんだものだ。

 2006年以降のスナップ写真、高校のイヤーブックの画像、Facebookの映像、日記、そして2022年にアメリカに戻ったときに撮影した写真が掲載された本書を通し、彼女の人生で様々なものが形成されていく時期に大きな影響を与えた、その出来事を共有する方法を模索している。悲しみや恥ずかしさという感情を越え、対話のきっかけになるような作品が並ぶ。