フィリップ・パレーノ：この場所、あの空

　ポーラ美術館で、企画展「フィリップ・パレーノ：この場所、あの空」が開催される。

　現代のフランス美術を代表するフィリップ・パレーノは、今日もっとも注目されるアーティストの一人だ。映像、音、彫刻、オブジェ、テキストやドローイングなど作品は多岐にわたるが、その意識はつねに、現実／フィクション／仮想の境界、あるいは実物と人工物とのあいだに生じる乖離、その奇妙なずれへと向けられている。また、芸術や「作者性」の概念にも疑問を投げかけ、数多くのアーティスト、建築家、音楽家と共同で作品を生み出してきた。

　パレーノはAIをはじめとする先進的な科学技術を作品に採り入れながらも、ピアノやランプ、ブラインドやバルーンといった見慣れたオブジェを操り、ダイナミズムと沈黙、ユーモアと批評性が交錯する詩的な状況を生み出す。その空間に足を踏み入れた私たちは、まるで壮大な「映画」のなかに迷い込んだかのような、新鮮な驚きとともに混乱をともなう体験のなかへと身を投じることになるだろう。

　国内最大規模の個展となる同館での展覧会では、作家の代表作である映像作品《マリリン》（2012）*をはじめ、初期作品から初公開のインスタレーションまで、作家の幅広い実践を多面的に紹介する。*新収蔵作品