EXHIBITIONS

石井亨「漂う/ DRIFTING」

SOKYO ATSUMI
2024.02.10 - 04.11

⽯井亨 東京景_休憩中の警備員 2024

 SOKYO ATSUMIで、⽯井亨の個展「漂う/DRIFTING」が開催されている。

 ⽯井は1981年静岡県⽣まれ。2014年に東京藝術⼤学⼤学院美術研究科美術専攻博⼠後期課程修了し、その後15年度の⽂化庁新進芸術家海外研修員に選出され、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で2年間の研修を経験する。本展と並⾏して開催されている、札幌国際芸術祭(略称:SIAF)の会場のひとつである北海道⽴近代美術館「1924-2024 FRAGILE[こわれもの注意]」展(〜2⽉25⽇)にも出展。

 アメリカ戦後絵画に始まるステイニング技法(滲み)と着物や帯の⽂様染として江⼾時代より継承される⽇本の伝統的な染織技法である⽷⽬友禅染の技術をもちいつつ、伝統⼯芸の領域とは⼀定の距離を保ってきた。⽷⽬友禅染は、⽷⽬糊というもち⽶などでつくった糊を⽷のように細く図柄の輪郭に防染として引き、絹に鮮やかな⾊彩で四季折々の草花や⾵景などの模様を精緻な線とぼかしで描き出すのが特徴だ。

 本展では、フィルムカメラで撮影された写真の加⼯やデジタルバグと伝統染⾊技法の失敗を意図的に組み込むというプロセスを通して、今⽇の東京⾵景を表現した「東京景」シリーズを展⽰。令和の浮世絵というテーマのもと、現代社会の象徴的な図像を映し出し、変容し続ける現代社会が反映されている。「漂う/DRIFTING」という本展のタイトルには⾊がステイニング技法により画⾯に「漂う」こと、都市を徘徊しながら、漂流しながら撮影した東京の⾵景など、複数の意味合いが込められている。

 07年にロンドン芸術⼤学に留学した際、⽔の違いで染⾊が変わるのを発⾒したことがきっかけとなった《隅⽥川》や《渋⾕川》は、実際にその川の⽔を汲んで染めることで、川の湿度を可視化し、現代の川の⾵景を⽣成。⽯井は留学を経て、客観的に⽇本で紡がれてきた伝統技術と⾃らの作品を真摯に⾒つめ直した。

 ⽷⽬友禅染技術とステイニング技術、アナログとデジタルの表現要素をかけあわせ、新たなステイニング絵画の構築や伝統技術の⾰新と現代美術の刷新を試みる。そして、⻄洋と東洋の絵画および染⾊表現の探究と発⾒を礎に、現代における伝統芸術の在り⽅を提起する作品を紹介。