EXHIBITIONS

ローラン・グラッソ「Orchid Island」

2024.01.26 - 02.24

©︎Laurent Grasso / ADAGP Paris, 2023. Courtesy of the artist and Perrotin.

 ペロタン東京で、ローラン・グラッソによる個展「Orchid Island」が開催されている。

 ローランは1972年ミュルーズ(フランス)生まれ、現在はパリおよびニューヨークに在住。パリ高等美術学校、クーパー・ユニオン(ニューヨーク)、セントラル・セント・マーティンズ(ロンドン)で学ぶ。映像、絵画、彫刻、建築、インスタレーションなど多岐にわたる手法で作品を発表しており、未来から過去へ、過去から未来へと、文明史を自由に跳躍しながら俯瞰する視点で知られる。日本では、2015年に銀座メゾンエルメス フォーラムにて個展「Soleil Noir」(黒い太陽)を開催、また16年には森美術館の「宇宙と芸術展」に出展。西洋と日本の文化を折衷させた奇妙で興味深い作品群を発表した。

 ローランは世界中の様々な地域の歴史、科学史や神話をリサーチし、雲、流れ星、皆既日食から奇跡的現象、遺跡、科学におけるパラダイムシフトや発見、花や植物の帯化現象など多様なものをモチーフに制作。さらに、光、音、電気、重力、波動、宇宙エネルギーといった目に見えない要素を可視化してきた。神話的であると同時に科学的でもあり、考古学的遺物のようにも見えながら非常に現代的で時にポップな作品群は観る者の思考を刺激する。

 本展で展示されている4つの風景画の表面には半透明の膜がかかっており、映像の中では動くスクリーンとして機能していた雲が物質化している。黒い大理石でできた小さくて可愛い雲は映像の中の神のような雲とは対象的だが、同時に、海底の海洋生物が石灰岩となり、さらにそれが地殻変動によって大理石となる行程を考えると、この小さな雲は巨大な黒い雲から海に降り注いだ水の記憶を秘めているのかもしれない。

 グラッソの映像、彫刻、絵画、写真は、異なる時間性、地理、現実の交差点に位置し、観るものを不確かで不可思議な世界へと誘う。その作品が創りあげる神秘的な雰囲気は、私たちの認識や理解の限界に挑むものだ。彼の作品は「共通の認識」の背景にあるものを明らかにし、歴史と現実に対する新たな視点を私たちにもたらす。