後藤靖香 「In the Blue」

　iti SETOUCHIで、後藤靖香による個展 「In the Blue」が開催されている。

　後藤は、自身の祖父や大叔父の戦争体験を始め、歴史に埋没した個人史や場所の記憶を丹念に調査し、大画面に劇画調のタッチで描くスタイルで知られている。

　本展では、近年の人形浄瑠璃文楽にちなんだ作品制作に着目し、青の色彩を基調に描いた舞台美術のプロジェクション・マッピングの素材となる原画や緞帳の巨大ドローイングを中心に展示する。後藤がテーマカラーとした青は、物語の繊細な心情描写に効果を発揮し、そのドローイングの力は古典芸能の作品世界を現代の人々に新鮮に伝えている。

　古典芸能に新たなイマジネーションを与える後藤の作品を通じて、過去から未来へと文化を伝える現代アートの可能性について考えると同時に、人形浄瑠璃と藍の関わりから、瀬戸内から大阪への 「青の文化史」を再考する契機ともなるだろう。