昨年大晦日のWHITEHOUSEによるカウントダウンパーティーを皮切りに、EASTEAST_やHEAVENのワンナイトパーティーの開催など、試験的にイベントを繰り返してきた新宿・歌舞伎町の王城ビル。ここで、Chim↑Pom from Smappa!Group(以下、Chim↑Pom)による新プロジェクト「ナラッキー」が9月2日〜10月1日に開催される。
1964年に竣工し、城を模した独特のデザインで愛されながら、当初は名曲喫茶、キャバレー、カラオケ店、居酒屋へと業態が変化し、2020年3月まで続いてきた王城ビル。今後、王城ビルが街に愛され、街と人をつなぐ交歓・交流の場として、東京・歌舞伎町のアートのハブとしての役割を担うため、どのような機能を持った場が必要かを検討し提案するために、任意団体「歌舞伎町アートセンター構想委員会」が立ち上がった。
同委員会からの提案により、王城ビル所有者である大星商事株式会社とChim↑Pomのプロジェクト型展覧会「ナラッキー」を第一弾として開催。王城ビルの全館を使用する本展では、Chim↑Pomが新作インスタレーションを制作・常設展示するほか、レストランや各種イベント、ショップも手がけ、王城ビルを1ヶ月限定の「Chim↑Pom from Smappa!Group による美術館」のような施設へと変身させる。
本展のテーマは「奈落」。翻訳サイト「DeepL」では「The End」と訳され、落下事故やかつての暗い雰囲気などから、仏教用語で地獄を意味する言葉で名付けられた。「奈落に落ちる」の慣用句に代表されるように、江戸時代には舞台の地下は忌まわしい場所として遠ざけられていたという。
本展でChim↑Pomは、歌舞伎への敬意と歌舞伎町の歴史への接続から、吹き抜け空間に実際の奈落で録音された歌舞伎公演の音を流す。また、吹き抜け空間にはセリも登場し、カッティングしたトラスが上下するサイトスペシフィックなビルの彫刻作品となる。さらに、吹き抜け空間の上部階である屋上にも穴を開け、「奈落の底」である最下層部の床も解体。閉鎖空間を外へと接続し、奈落の概念を街と天へと上下左右に拡張することを目指すという。
なお本展では、今年3回目を迎える「歌舞伎超祭」もフィーチャー。ドラァグクイーンやポールダンス、バーレスク、車椅子ダンサー、ファッションなどのパフォーマンスをミックスした歌舞伎町独自のフェスであり、演者たちの動きにより展示のエッセンスをつくり出す。