EXHIBITIONS

土方久功と柚木沙弥郎 ――熱き体験と創作の愉しみ

2023.09.09 - 11.05

柚木沙弥郎 ならぶ人ならぶ鳥 1983 世田谷美術館蔵 

土方久功 美しき日 1970 世田谷美術館蔵 撮影:上野則宏

柚木沙弥郎 町の人々 2004 世田谷美術館蔵 撮影:上野則宏

 世田谷美術館で「土方久功と柚木沙弥郎 ――熱き体験と創作の愉しみ」が開催される。

 土方久功(1900〜1977)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科を卒業後、1929年から42年まで、当時日本の委任統治領であったパラオ諸島や、カロリン諸島中部のサタワル島で過ごす。現地の人々と生活しながら制作に励むいっぽうで、周辺の島々を巡り、生活様式や儀礼、神話などの詳細な調査も熱心に行なった。帰国後は世田谷区の自宅で、ミクロネシアの人物や風景を主題とした木彫レリーフやブロンズ彫刻、水彩画を数多く制作している。さらには民族誌学的調査の成果をまとめた著書や、詩集、絵本も出版。

 柚木沙弥郎(1992年生まれ)は東京帝国大学(現・東京大学)文学部美学美術史科で学んだ後、柳宗悦が提唱する「民藝」の思想と、芹沢銈介の型染カレンダーとの出会いを機に染色の道を志すようになる。以来、鮮やかな色彩と大胆な構図の型染による作品を発表するほか、立体作品、絵本まで精力的な創作活動を展開している。100歳を迎えてなお活躍を続ける柚木の作家人生においては、海外でメキシコの玩具などを目にした経験が、より自由な表現へ向かう契機と言える。

 両者に直接的な接点はないものの、多彩な表現の広がりをみせる土方と柚木の作品世界は、不思議と共通項を見出すことができる。本展では世田谷美術館の収蔵品に作家や遺族の方が所蔵する作品と資料を加え、パラオ諸島や周辺の島々での稀有な体験、そして日常の身近なものや出来事に潜む面白さを源泉として生まれた二人の創造の世界を紹介する。