EXHIBITIONS

ナラッキー Chim↑Pom from Smappa!Group

王城ビル
2023.09.02 - 10.15

展示風景より、《奈落》(2023)

 王城ビルで、大星商事株式会社(王城ビル所有者)とChim↑Pom from Smappa!Groupのプロジェクト型展覧会「ナラッキー」が開催されている。

 王城ビルは、文字通り城がモチーフの外観をした、1964年竣工の歌舞伎町古参の建物で、名曲喫茶、キャバレー、カラオケ店、居酒屋へと業態を変化させてきた。2022年大晦日のWHITEHOUSEによるカウントダウンパーティーを皮切りに、EASTEAST_やHEAVENのワンナイトパーティーの開催など、試験的にイベントを繰り返してきた。この流れを受けて、任意団体「歌舞伎町アートセンター構想委員会」を立ち上げることになった。本展はその記念すべき第一弾の展覧会となる。

 城の裏側には約30年間閉ざされてきた吹き抜けがあり、そこにChim↑Pomの新作インスタレーションを常設設置する。本展ではそのお披露目とともに1カ月限定の「Chim↑Pom from Smappa!Group による美術館」のような施設を仮設する。Chim↑Pomは、戦後に歌舞伎町で展開された都市計画や中沢新一『アースダイバー』の冒頭で紹介されている王城ビルの隣の「歌舞伎町公園(歌舞伎町弁財天)」に注目し、その文脈に閉ざされてきた吹き抜けを重ね、今回その空間を「奈落」として読み取ることを試みている。

「奈落に落ちる」の慣用句に代表されるように、江戸時代には舞台の地下は忌まわしい場所として遠ざけられていた。Chim↑Pomは、吹き抜け空間に実際の奈落で録音された歌舞伎公演の音を流す作品を制作。録音は、歌舞伎界の新鋭として次世代を担い、現代アートに関する著作もある尾上右近の自主公演第七回『研の會』「夏祭浪花鑑」公演中の奈落だ。また、吹き抜け空間にはセリも登場する。カッティングしたトラスが上下するサイトスペシフィックなビルの彫刻作品となる。さらに、吹き抜け空間の上部階である屋上にも穴を開け、「奈落の底」である最下層部の床も解体することで、閉鎖空間を外へと接続し、奈落の概念を街と天へと上下左右に拡張している。