EXHIBITIONS

開館20周年記念展

中川 衛 美しき金工とデザイン

中川衛 象嵌朧銀花器「チェックと市松」 2017年 金沢市立安江金箔工芸館蔵

 パナソニック汐留美術館の開館20周年を記念し、金工作家・重要無形文化財「彫金」 保持者(人間国宝)、中川衛の展覧会「開館20周年記念展 中川 衛 美しき金工とデザイン」が開催されている。

 中川は1947年石川県金沢市生まれ。金沢美術工芸大学産業美術学科で工業デザインを専攻し、柳宗理や平野拓夫らの薫陶を受け、71年に卒業。大阪の松下電工(現パナソニック)に入社し、美容家電製品などのプロダクトデザインに携わる。帰郷後「加賀象嵌」に魅了され、石川県の無形文化財保持者に認定された彫金家の高橋介州(1905~2004)に入門。2004年には金工の技術継承に尽力した功績により、重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定された。現在では母校の金沢美術工芸大学をはじめ後進の育成に尽力するいっぽう、積極的に海外研修を行うなど国際的な視野で活動を展開している。

 象嵌とは、金属の表面を鏨で彫り、できた溝に異なる金属をはめこんで模様を作り出す技法であり、精緻な仕事が求められる。そのなかでも中川は、複数の金属で構成し、難易度が高いとされる「重ね象嵌」を極めてきた。「工芸も工業デザインも創作の展開は同じである」と語る中川は、企業で身につけたデザイナーとしての制作手法を生かし、金工の試作を重ね、日常生活にヒントを得たフォルムと、自身の記憶から紡ぎ出した抽象文様により、現代的な象嵌の作風を築いた。

 本展では、中川の初期の象嵌作品から最新作までを展覧するとともに、1970〜80年代に手がけたプロダクトデザイン、金工の道に進む原点となった加賀象嵌の名品、現代アーティストとのコラボレーション、中川から技を受け継ぐ次世代の作品まで、作品と資料を合わせて約130点を紹介する。