富山、石川、福井の3県にまたがる広域が舞台となる北陸工芸の祭典として2020年に始まった「GO FOR KOGEI」。工芸の魅力を今日的視点から発信するプラットホームとして着実に回数を重ねてきた同祭が、今年4回目の開催を迎える。会期は9月15日〜10月29日。
今年のテーマは「物質的想像力と物語の縁起ーマテリアル、データ、ファンタジー」。ここにある「物質的想像力」とは、フランスの科学哲学者であるガストン・バシュラール(1884〜1962)の著書『水と夢:物質的想像力試論』のなかで使用された言葉だ。本展では、この言葉を軸にしながら、絵具だけでなく土、布、鉄など様々な物質を使用する26作家が参加。工芸、現代美術、アール・ブリュットなどのジャンルを超えたラインナップとなる。
本芸術祭で総合監修とキュレーションを手がける秋元雄史(東京藝術大学名誉教授)は、いわゆる「工芸」にとどまらない今回のコンセプトについて、こう語っている。「工芸をいちジャンルとして考えるのではなく、今年は工芸的な枠組みを溶解し、絵画やインスタレーションなども含めて横並びに今日の表現として展覧する。フレーム化された工芸のなかで工芸を問うのではなく、フレームそのものを見直したい」。
いっぽう、本芸術祭プロデューサーの浦淳(認定NPO法人趣都金澤理事長)も、今回の試みについて「アートと工芸の境目があいまいになるなかで、工芸とは何かを再考するきかっけにしたい」と意気込みを見せている。
今回は会場構成もこれまでと異なる。舞台となるのは、富山市の中心部から富山湾までの約5kmにわたる富岩運河沿いにある「環水公園エリア」「中島閘門(こうもん)エリア」、そして「岩瀬エリア」だ。鑑賞者はこれらのエリアを徒歩や路面電車、観光船などでめぐりながら鑑賞するというスタイルとなる。各エリアの詳細と参加作家を紹介しよう。
環水公園エリア
環水公園エリアは、富山駅から徒歩約8分の樂翠亭美術館と、富岩運河環水公園、富山県美術館の3ヶ所が会場となる。樂翠亭美術館では、土と陶芸表現のバリエーションと広がりが紹介される予定であり、環水公園と富山県美術館ではサイトスペシフィックな作品が展開予定だ。参加作家は川井雄仁、オードリー・ガンビエ、金理有、久保寛子、桑田卓郎、近藤高弘、辻村塊、野村由香。
中島閘門エリア
中島閘門(こうもん)は富山運河の始点である環水公園と終点である岩瀬の中間地点にあたる場所。昭和の土木構造物では全国て初めて重要文化財に指定されており、会場はこの閘門の操作室とその横に広がる芝生広場、そして徒歩1分の元タクシー会社社屋「電タク」の3ヶ所となる。出典作家は板垣豊山、上田バロン、川上健次、河部樹誠、定村瑶子、長恵、増田セバスチャン、横野明日香、渡邊義紘。
岩瀬エリア
古くから日本海側の主要港として栄えた岩瀬は、旧北国街道の風情が残る街だ。ここでは伝統的な街並みと現代アートを組み合わせて展示を構成。岩崎貴宏、O33、コムロタカヒロ、桜井旭、ささきなつみ、葉山有樹、平子雄一、古川流雄、村山悟郎が出展する。