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ついに開幕! 恐怖を切り口に名画を読み解く「怖い絵」展が東京へ

西洋の名画を「恐怖」という切り口で解説した美術書『怖い絵』シリーズの著者・中野京子の監修による「怖い絵」展が、神戸での開催を終え東京・上野の森美術館に巡回する。10月7日の開幕を前にした内覧会では、監修を務めた中野と音声ガイドを担当する女優の吉田羊によるトークセッションも行われた。

左から、本展監修者の中野京子と女優の吉田羊。ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》の前で

 『怖い絵』は、「恐怖」をキーワードに、時代背景や隠された物語などの知識をもとに絵画を読み解く美術書。2007年の発売以来ベストセラーとなり、関連書籍も合わせると5冊が刊行されている人気シリーズだ。

 この『怖い絵』シリーズが今年で刊行10周年を迎えるのを記念し、著者である作家でドイツ文学者の中野京子の監修のもと開催される本展。日本初公開となるポール・ドラローシュの《レディ・ジェーン・グレイの処刑》(1833)をはじめ、ターナー、モロー、セザンヌなど近代絵画の巨匠の作品を含む、近世から近代にかけてのヨーロッパ各国で描かれた油彩画や版画約80点が展示される。

ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー《オデュッセウスとセイレーン》の前で作品について語る中野

 展示は「神話と聖書」「悪魔、地獄、怪物」「異界と幻視」「現実」「崇高の風景」「歴史」の6つのテーマで構成され、視覚的な怖さだけではない様々なタイプの「恐怖」を表現した作品が並ぶ。さらに、一部の作品の横には「中野京子's eye」として作品を読み解くためのヒントも記されており、より想像力を広げて、作品が持つ恐怖の世界を味わうことができる。

左から、作者不詳(フランドル派)《不釣り合いなカップル》(16世紀)と、ジョン・バイアム・リストン・ショー《人生とはこうしたもの》(1907)
ジョセフ・ライト《老人と死》の展示風景

 中野によるギャラリートークでは、本展の最大の目玉である《レディ・ジェーン・グレイの処刑》について、ふっくらとした腕や、動きのぎこちなさによってジェーン・グレイの若さが巧みに表現されていることや、劇の一場面のように画面が構成されていることなど、本作の魅力が語られるとともに、「この絵が借りられなければこの展覧会は開かないと決めていた」と、借用にあたっての舞台裏での困難と、この作品にかける強い思いも明かされた。

 続いて、本展で音声ガイドを務める女優の吉田羊とのトークセッションでは、「なぜ『恐怖』をテーマに選んだのか」という吉田の問いに対し、中野は「恐怖は動物のDNAに刻み込まれたもので、恐怖があることで生き延びてきた。だから様々な恐怖のバリエーションが絵画に表現されている」と語った。

中野京子(左)と吉田羊(右)によるトークセッションの様子

 西洋絵画の名作をこれまでにない新たな視点から紹介する本展。隠された様々な「恐怖」に気づく瞬間を体験してみてはいかがだろうか。

展覧会の最後には、本展の目玉のひとつであるジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》の鏡のなかに入り込んで写真撮影ができるコーナーも

編集部

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