Paula Rego and Adriana Varejão「Between Your Teeth」(Centro de Arte Moderna Gulbenkian、4月11日〜9月22日)

ポルトガルの首都リスボンにある私立美術館Centro de Arte Moderna Gulbenkian(CAM)では、リスボン出身のポーラ・レゴ(1935〜2022)とリオデジャネイロ出身のアドリアナ・ヴァレジョン(1964〜)という、異なる世代と土地に生まれたふたりのアーティストによる、絵画、彫刻、インスタレーション約80点の作品によって構成される展覧会が開催された。「Between Your Teeth(あなたの歯のあいだで)」というタイトルは、1974年、独裁体制下のブラジルで詩人ヒルダ・ヒルストが綴った詩の一節に由来する。ヒルストは、貪欲さや征服、利益、搾取と結びついた権力を描写し、批判している。文字通りの身体、そして比喩的な身体の表象を通して、レゴとヴァレジョンは、権力者によって行われてきた搾取と非人間化を明らかにしていく。世界を変容させるために、自らの「身体」を差し出すアーティストたちの実践は、緊張と共鳴を伴いながら立ち現れていた。
αMプロジェクト2023‒2024「開発の再開発 vol.8 Multiple Spirits|いつでもルナティック、あるいは狂気の家族廃絶」(gallery αM、2024年11月30日 〜25年2月8日)

Multiple Spirits(マルスピ)のZINEを起点として、〇九一四、エイミー・スオー・ウー(吴索)、遠藤麻衣×百瀬文など、様々なアーティストの作品が展示されていた。家族廃絶やアナーカ・フェミニズムを軸に、書籍や映像作品が紹介されるなか、筆者が訪れた最終日には、〇九一四による木版画パフォーマンス「朱門解体」が行われていた。来場者との対話を介して、「解体したいもの」が書き込まれた障子は、アーティストや参加者の手によって破壊され、解放されていく。ここでの破壊は、のちの修理を前提とするものではなく、既存の枠組みを解体し、別のつながり方を一時的に開く実践と受け取れた。言葉と資料、身体的な手つきが相互に連鎖し、日常の規範をずらす回路が開かれていた。
特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」(国立民族学博物館、9月4日〜12月9日)

人類史のなかで舟がどのように誕生し、用いられてきたのかを、アジアやオセアニアの海域に見られる多様な舟を通して紹介する展示であった。人類が海を渡ってきた歴史を、人類学・考古学の視点からひもとき、様々な素材でつくられた舟や、漁、交易、信仰との関係といった複数の観点から構成されている。そのなかで、トロブリアンド諸島で行われてきた「クラ(クラ交易)」が紹介され、売買や利益を目的とする交易とは異なる、関係性を結ぶための交換の在り方が示されていた。交換される装飾品は誰かに所有され続けることなく、経済的価値を超えたものとして海を巡っていく。その行為は、美術作品が巡回していく在り方ともどこかで重なり合い、何かを所有し続けることから解放された豊かさの在り方へと思考を巡らせてくれる展示であった。
























