2020.7.14

絶望的であり、楽園のようでもあるこの世界。画家・桑原正彦が個展「heavenly peach」で新作を発表

大量生産や商品価値の追求に伴う破壊と汚染など、日本高度成長下の幼少期の思い出とともにある様々な変化を描く画家の桑原正彦。その個展「heavenly peach」が、東京・六本木の小山登美夫ギャラリーで開催されている。会期は8月8日まで。

桑原正彦 Emily 2019
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 1990年代後半より、一貫して人間の欲望による環境の変化に着目して絵画を描く桑原正彦。その作品に登場するのは、ペットとしての動物や玩具、風景のほか、折込チラシに掲載の無名の少女や建売住宅のイメージだ。桑原は、大量生産や商品価値の追求に伴う環境破壊と汚染など、60~70年代の日本高度成長下の幼少期の思い出とともにある様々な変化を表現している。

 例えば、公害によって汚染された海に現れたアザラシは、そこを新しい生活の場として生き抜き、人々に可愛さを撒き散らす。可愛いと思うその心すらも人間の欲であるという、絶望的であり楽園のようでもある世界を、桑原は描く。

桑原正彦 遺品 2017 © Masahiko Kuwahara
桑原正彦 Sweet-ex 2019

 現在その個展「heavenly peach」が、東京・六本木の小山登美夫ギャラリーで開催されている(〜8月8日)。本展のタイトルは、桑原曰く「芳香剤のような、何かが終わった後に残っている微かな香りのイメージ」とのこと。出展作品《遺品》も、亡くなった人物の所持品が、持ち主がいなくなった後にもぽつんと残る儚げな様子を表す。 

 現代への皮肉や空虚感を湛えながらも、決して突き放すわけではない桑原の作品。愛情と優しさを込めた眼差しで、人々が見過ごしている世の中のおかしさを軽妙にすくい取る。桑原は、本展を開催するにあたって以下のようにコメントしている。

 今朝、光沢を失った表面が剥がれていた。
 改めて、それが化粧板であることを思い出す。
 魔法は耐用年数を終えて、わたしは14才になった。

 嘘っぽい、というよりは
 これが世界なのだと思う。
 わたしの背中には、嘗て、きれいな羽根があったはずだった。

 山の手発、幸せの魔法。
 忙しく、疲れた現代人にときめきとヒーリングを。
 夢を叶え、仕事も、愛も、お金も手に入れてしまう。
 人脈拡大。
 大成功しているわたしが、この世の法則教えます。

 疲れる。気候も不快。
 睡眠不足注意。
 愛 受け身 吉ラブ、結婚への夢消えず。通信よい

 肛門近くの直腸には、カプサイシンの受容体が
 たくさんあるので、おしりが痛くなることも。

 猿山での成功。
 名誉とか、金とか、アレとか。
 上位置にこびる中間層が自分より下の層をつくり、
 その位置を維持する。

 注文から最短2時間でお届けします。

 若い頃は旅行やさまざまな習い事など、
 何でもやりました。
 けれど、もうやりたい事がありません。
 ただ、仮面をつけ、自分は何のために生きているのでしょうか。

 私は努力し国家資格を取得し、夫に頼らずとも
 暮らせる経済的自立を果たしています。
 夫が会社員であるということだけで保険料その他、
 多額の納税もせず、平然と生きている女性が許せません。

 ”本当の価値”とは何でしょうか。
 たくさん作って、たくさん買って、たくさん捨てる。
 無理に正しすぎる人たち。
 おいしい所だけの正統と異端。

 わたしは、何を嫌悪しているのか、
 それがわかりません。

 リーナをバックに入れて、表に出る。

 長生をしたら、わたしもこの世界をゆっくりと味わえる日が
 くるだろうか。

 それでもわたしは、世の中に溢れかえる性急で感情を
 あおる言葉に、いつも負けてしまう。

 この、わたしがとても重荷。

 平和とか、自由には手間と、それに耐えることの出来る
 実がとても大切なのだと本で読んだことがある。
 何かを考えているふりをしているわたしは、
 いよいよ試されることになった。

 家電量販店の広い店内を散歩する。

 もしかすると、わたしが知らないだけで、感情調整器とか、
 そんなのが既に売られているかも知れないし。
 わたしにも何とかなりそうな値段で。

  ”先端機器と身体の融合によって、人間観の変容、
 現実の意味内容を変えることも可能です。”

 わたしは欲しい。そうゆうのが。
 不都合を考えずに済む装置。
 夢みたいな物語が。 

 フェアリー ハートチャーム。
 ピーチ リボン パレッタ。
 ムーンドロップ 羽根リング。

 家に帰って、買ったものを並べてみる。

 売場での輝きはそこになく、
 平らな空き地みたいだ。

 片付けることにした。
 わたしはそこで静かな無意味に
 なれるかも知れない。

 しつこい汚れ。
 いやな、おさるさんみたいな、
 厄介なゴミ。
 バイバイ、さよなら。

 白っぽいケーキみたいな家の前で笑っている子。
 あれは私かな。

 整理収納。

 街はとてもきれいだ。 

 桑原正彦

桑原正彦 new products 2019
キャプション桑原正彦 new products 2019