高木由利子「chaoscosmos vol.3 — visible viscosity 可視化された粘性 —」開幕レポート。写真は「見えない自然」をどう写すのか?【3/4ページ】

蜘蛛の巣に現れた、二度と再現できない像

 その姿勢を象徴するのが、展示室で大きく展開される蜘蛛の巣の写真だ。

本展でもっとも巨大な作品となった《V_A6A9059-4》(2016)

 撮影されたのは約10年前の東京。雨上がりの朝、高木が散歩をしていると、幾重にも張り巡らされた蜘蛛の糸に朝日が当たり、光を放っていた。何かが起こる予感を感じた高木は友人を呼び、黒い背景を用意して撮影。しかし、その場でファインダーをのぞいていたときには、最終的な像はまだ見えていなかったという。写真を確認すると、蜘蛛の糸には虹色の光が不規則に現れ、直線に見えていたものが輪や螺旋を描くようにつながっていた。

 高木はその後も同じ現象を撮ろうとしたが、再現することはできなかった。「自然はつねに変化していて、二度と絶対同じことは起きない」。その一回性もまた、作品に含まれる重要なメッセージなのだという。

展示風景より、アルミパネルに印刷された作品群

 本展に並ぶ写真には、何が写されているのかを一見しただけでは判断できないものも少なくない。惑星の表面、星雲、あるいは抽象絵画のようにも見える像が展示室を満たす。高木はあえて、それぞれが何を写したものなのかを作品タイトルによって明示しておらず、「まず何の予備知識もなく見ていただいて、どう感じるかというところから入っていただきたい」と話す。鑑賞者が名前によってイメージを固定する以前に、まず像そのものと向き合うことが意図されている。

編集部