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「高木由利子 写真展 カオスコスモス 弐 —桜—」開幕レポート。宇宙や広大な地形を思わせる桜

レンズを通して様々な自然現象に潜むメッセージを受け取った写真作品を発表してきたフォトグラファー・高木由利子。その個展「高木由利子 写真展 カオスコスモス 弐 —桜—」が表参道のGYRE GALLERYで開幕した。会期は4月29日まで。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より

 2022年に表参道のGYRE GALLERYで写真展「カオスコスモス 壱 —氷結過程—」を開催したフォトグラファー・高木由利子。同展の第2弾として、「高木由利子 写真展 カオスコスモス 弐  —桜—」が開幕した。

 前回の個展で高木は、水が氷に変貌する過程である「氷結過程」をレンズを通して肉眼ではとらえることの出来ない自然現象に潜むメッセージを受け取った写真作品を発表。今回は、日本人が愛してやまない「桜」を独特な視点で儚さや潔さに翻弄されながら撮り続ける作品を展示している。

展示風景より、左は《S_A6A7989》(2014)

 この展覧会シリーズのタイトル「カオスコスモス」は、「カオス(混乱)」と「コスモス(秩序、宇宙」を組み合わせた高木による造語。この言葉について、高木は今回の開幕に際して次のように語っている。

 「カオスとコスモスは因果関係にあって、同時多発的に存在している。自然の不可思議をレンズを通して取っているうちに、秩序と混乱がつねに混在していて、それがあるが故に、生物すべてが存在している。混乱と秩序の混在している仕方も非常に多様で、計り知れない不思議が自然界には潜んでいる」。

展示風景より

 今回の「桜」展について高木は、咲く前から散った後までの「桜の一生を撮りたい」と話した。「桜を追いかけることで、すべての自然現象につながることが感じられてきた。撮影しているうちに、様々なかたちが現れた」。

 展示作品を大きく分けると、見上げる桜の木と満開の桜、そして地面に落ちる桜の花びらを見下ろすという2種類の構成となっている。GYRE GALLERYの中央の展示室では、雨のあとに地面に落ちた桜の花をとらえた写真が展示。雨に流された桜の花びらは、地面に様々なかたちをつくり出し、人々の想像力をかきたてる。

展示風景より

 また、今回の展示作品はすべてデジタルだが、高木は竹和紙やバッグに多く使われている生地「KONBU®」にプリントしたり、裏から彩色する技法を使ったり、実際に暗室でラムダプリントをしたりするなど、様々な素材やプリント方法に挑戦したという。「紙の質とイメージの組み合わせが、新たなイメージをつくりだす。デジタルのシリーズをどうやって愛しいプリントにできるかというのも私の課題だ」。

展示風景より
展示風景より、上から《S_MG_6411》《S-MG_6368》(いずれも2016)

 作品の被写体はすべて「桜」だが、時間や場所、天候などの撮影時の条件が異なるため、それぞれ異なる表情を見せている。また、様々なかたちやフォームを持つ作品は、ときには抽象画のようなものであり、宇宙や銀河、あるいは地球の広大で変化に富んだ地形や風景をも連想させる。高木は、それぞれの作品について「自由にとらえてもらいたい」と話す。桜の咲くこれからの季節に、ぜひ足を運んで思いを馳せたい。

展示風景より
展示風景より

編集部

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