巨大なシステムのなかで自らを位置づける
続いて向かうのは、24時間体制で下水処理の状況を管理する中央操作室のある中央管理棟だ。その玄関ホールには銀塩写真、地図、そして施設内の植物を組み合わせた作品が展示されている。写真の被写体となっているのは、エベレストのベースキャンプでリサーチをする保良の姿で、氷の壁面に手を押しあて体温によって氷を溶かし、水を生み出す様子が記録されている。


この管理棟の3階では、部屋をひとつ使用して作品が展開されている。暗闇のなかに組まれたジェットコースターのレールのうえを、鉄の塊が定期的に滑り落ちてくる。鉄の塊には、鉄の2.5倍の重さがある金箔が貼られており、その塊が重力に逆らいながら、人力による自転車の歯車の回転運動で昇り、そして滑走する仕組みだ。位置エネルギーと人力を組み合わせて循環をつくり出すこの構造は、微生物をはじめとした自然の力と人工のシステムを組み合わせ、排泄物で汚れた水を処理し循環させる本施設の役割とも関連づけられているのだろう。

雨水滞水池は下水と雨水が一緒になる合流式下水道を流れてきた汚れた雨水を一時的に貯めておく場所だ。ここではインスタレーションとともに映像作品が上映されている。地下の雨水管などで撮影された本作には、ピエロたちが登場する。自身の身体を取り外したり、膨らませたりしながら、循環を感じさせる奇妙な行動を続ける、ユーモアと緊張感が同居する映像は、本施設が担っている人間の排泄物を人為的に循環させるという役割の、根本にある奇妙さを際立たせる。
人間が都市生活をするうえで不可欠なインフラである下水処理施設を舞台に、標高5000メートルを超えるヒマラヤの氷河から、水の底に沈殿した汚泥までをつなぎ合わせ、循環のダイナミズムと滑稽さを同時に表現した本展。いま、自分はこの循環のどこにいるのか、どこを見ているのか。そんな問いが湧き上がる試みとなっている。



















