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「大横尾辞苑」(横尾忠則現代美術館)開幕レポート。横尾忠則を知るための「辞書」が展覧会に【2/3ページ】

 アルファベット編は、マイルス・デイヴィスのアルバム『アガルタ』のジャケットデザインを起点に展開される。なかでも注目したいのが、Eの項目「Ectoplasm(エクトプラズム)」で紹介されている《Ectoplasm》(1985)である。霊媒がトランス状態に陥った際に出現するとされる物質を指すこの概念は、「アストラル体」に連なるものであり、横尾の霊的なものへの関心を端的に示す。降霊術に直接言及した作品は横尾の画業のなかでも珍しいものだ。

展示風景より、横尾忠則《Ectoplasm》(1985)と《キリコーその永遠性》(1990)

 Pの項目「Picabia, Francis」も重要な要素だ。フランシス・ピカビアは、横尾がとりわけ重視してきた作家であり、抽象と具象を自在に行き来するその制作態度は、1980年代半ばに作風の揺らぎを抱えていた横尾に大きな衝撃を与えたという。1989年に刊行された雑誌『ユリイカ』(9月臨時増刊号)の「総特集 ピカビア」では、横尾が装丁を手がけており、その実物も展示されている。さらに興味深いのは、同誌に掲載された「ピカビアとの交霊日記」だ。物故芸術家の霊と横尾が交信するというこの構造は、後年発表される『原郷の森』へと連なっていく。

展示風景より、横尾忠則《ピカビアーその愛と誠実 Ⅰ》(1989)と雑誌『ユリイカ』(9月臨時増刊号)

 珍しい項目として挙げたいのが、Uの項目「UFO」である。同館で初公開となる《UFO Ⅰ(アガルタから)》および《UFO Ⅱ(アガルタから)》(1973)は、UFOを捉えた写真をもとに制作されたシルクスクリーン版画だ。1973年当時、3点組の版画《Agharta Ⅰ〜Ⅲ》と対をなす3連作として発表されたと考えられているが、現在確認されているのは2点のみで、残る1点の所在は不明だという。なぜこれまでほとんど発表されてこなかったのか、そして失われた1点はどこにあるのか。まさに「UFO」の名にふさわしい謎を孕んだ作品だ。

展示風景より、横尾忠則《UFO Ⅰ(アガルタから)》と《UFO Ⅱ(アガルタから)》(ともに1973)

編集部