体験型展示へと足を進めると、量子や宇宙は「理解する対象」から、「身体で感じる出来事」へと姿を変える。例えばJAXAによる《打上げ振動体験》(2026)では、2025年に退役したH-IIAロケット最終号機の打上げ時に、射点から約3キロメートル離れた建屋で記録された振動データが、ウーファースピーカーによって再現される。スピーカーに手を触れた瞬間、空気の震えが直接身体に伝わり、映像や音だけでは伝わらないロケット打上げの迫力を体感することができる。

本展はまた、展示室内にとどまらず、ミュージアムショップ横のホワイエ空間へと展示を広げている。田中ゆり、パヴレ・デイヌロヴィッチ、ウムット・コーセ、クリス・ブルックマイヤによる《Particle Post – Letters from the Universe》(2019)は、宇宙線ミューオンが検出器に届くと、古びた郵便箱が音と光を発する作品だ。遠い宇宙を旅してきた素粒子が、いま・ここに到達する瞬間を通して、鑑賞者は自らも宇宙史の一部であることを感覚的に受け取る。
森脇裕之の《物質と光(Matière et lumière)》(2026)は、物質と光の二重性を示したフランスの理論物理学者ルイ・ド・ブロイの理論に着想を得た作品である。「地球の石」という身近な物質から出発し、無重力を思わせる浮遊的な断片、そして方位を示しながらも物理的な重さを感じさせない羅針盤へと至る構成によって、物質から概念へと思考が移行していく過程が示される。月の石や火星の石が象徴的に扱われがちな宇宙展示に対し、本作は「宇宙とはどこにあるのか」という問いを、私たちの足元から立ち上げている。

「量子で考えれば、世界はもっと面白くなる」。森山が繰り返し口にするこの言葉のとおり、「ミッション∞インフィニティ」は、明確な答えを示す展覧会ではない。観測することで初めて立ち上がる世界、関係性がもつれ合いながら変化し続けるプロセス──その只中に身を置く体験そのものが、来場者に委ねられている。科学と芸術、研究者とアーティスト、そして鑑賞者が交差する場として、本展は、次の10年、その先へと思考をつなぐ起点となるだろう。




















