数学、写真、絵画と3つの表現方法を横断した大西の創作を紐解くべく、本展はフロアごとに異なる表現を紹介する構成となっている。展示がはじまる3階は大西の写真表現に注目する。そもそも大西は、占いや心霊現象といった理屈では説明できない世の中に起こる諸現象に興味を持っており、「世界はいかに成り立っているのか」という問いがすべての探求の核にあった。世界の始原的な状態、大西の言葉でいう「超無限」について紐解くことが、生涯を通じて掲げた目標であった。

大西は、世界の説明できない部分を数学によって捉えようと試みた。事実その数学的センスは抜群であったという。しかし「超無限」について数学だけでは突破できない問題があることに気づく。そこで目をつけたのが芸術、とくに写真表現であった。大西曰く、「超無限」とは、あらゆるものが矛盾した状態で成立すること。本来現実にはあり得ないそのさまを、写真によって可視化しようと試みたのである。
実際作品上では、抽象的なものと具象的なものが混ざりあっていたり、人物の身体がバラバラな状態になっていたりと、現実には起こり得ない像が写されている。異例な暗室技法を用いてこれらを制作していることは、大西の写真制作の特徴のひとつで、多重露光、ソラリゼーション(白黒反転)、沸騰した現像液の不均一な塗布など、様々な技法を自己流で組み合わせている。画面のなかで何が起きているのか判断できないものが大半であるが、これらはすべて大西の実験的な試みによるもので、最初から完成図を想像して制作することはなかったという。
1950年代当時、写真の世界ではリアリズムやジャーナリズムが主流であった。写真は、戦後の混沌とした社会情勢のなかで、リアルを写し出すためのものとして機能していたからである。そんななか、自由に実験を続ける大西の姿勢に美点を見出し高く評価するものもいた。いっぽう、「これは写真なのか」という声も当然ながらあがったという。いずれにせよ、当時の写真界に衝撃をもたらした前衛的な存在であったことには違いないだろう。






















