強烈なビジュアルに加え、作品のために自身で手がける楽曲も、笹岡作品を特徴づける要素のひとつと言える。笹岡の制作は歌詞とイメージの構想から始まり、ドローイングを経て、まずは楽曲が完成する。本展では、こうした制作過程の前段階として描かれてきたドローイングが初めて展示されている。作品に登場するキャラクターから、一見無関係に見える言葉やイメージまでが並び、その背景をうかがい知ることができる。

大阪・関西万博をきっかけに「ポーランド文化振興プログラム」の一環として制作された《ポロニア》(2025)は、科学者として知られるマリア・スクウォドフスカ=キュリー(キュリー夫人)のリサーチをもとにした作品だ。とくに家族にまつわるエピソードに目を向けており、それを受けて笹岡自身も家族とともに制作に関わっている点が本作の特徴だ。


展覧会のラストを飾るのは、「料理」をテーマとした新作映像作品《タイマツ》(2026)だ。本展のために制作されたこの作品は、笹岡作品のなかでも最大規模を誇り、これまでの作品を振り返りながら構想されたという。空撮という、笹岡にとって初めての手法も取り入れられており、新たな展開を感じさせる。
また、本作の作詞は、笹岡が滋賀へ移住した際に出会った就労継続支援B型作業所「蓬莱の家」とのワークショップを通して行われた。登場人物の制作にも滋賀県立美術館の関係者が関わっており、笹岡は「多くの人と協力して制作した、思い入れのある作品」だと語っている。


制作のインスピレーション源について尋ねると、笹岡は「日常のささやかなストレスが積み重なり、それがドローイングとなって作品につながっていく」と話してくれた。人や生き物をめぐる身近な苦しみやつらさに敏感であるからこそ、その裏返しとして「愛」や「家族」をめぐる表現が生まれるのだろう。笹岡の作品が、不気味さを帯びながらもどこか親しみを感じさせる理由は、そこにあるのかもしれない。
なお、美術館内3ヶ所には、いつでも参加可能な「ドロップイン・ワークショップ」エリアが設けられている。笹岡作品のキャラクターになりきり、その世界観に参加してみるのも楽しそうだ。会期中には学芸員によるギャラリートークや、笹岡本人によるトークイベントも予定されているため、関心のある方は公式ウェブサイトを確認してほしい。



















