第3章「松本竣介と綜合工房 手作りのネットワーク」では、新宿に隣接した池袋を拠点としていた松本竣介と、松本が下落合に構えたアトリエ「綜合工房」に注目した内容となっている。1930年代、池袋一帯には多くの芸術家がアトリエ村をつくっており、これらは「池袋モンパルナス」と呼ばれた。池袋モンパルナスを代表する作家には、靉光(あいみつ)、麻生三郎、鶴岡政男、寺田政明などが挙げられる。
松本の《N駅近く》と題された作品は、1940年に描かれた風景画である。本作に見られる通り、松本は様々な角度から捉えた建物や通り、人々などを、遠近感もバラバラに組み合わせ平面上に落とし込む手法を確立している。この手法は後に「モンタージュ」と呼ばれるようになった。なお、N駅とは西武新宿線の中井駅を指しているという。

本章は、階を別にして2会場で展開されているが、2つ目の会場入り口正面に見えるのが、本展のキービジュアルに使われている《立てる像》である。本作は第29回二科展出品作で、松本が描いた自画像のなかでも最大級のものであり、背景には新宿の街が描かれている。

本章の最後に紹介される、1943年に松本竣介、麻生三郎らと新人画会を結成した寺田政明の作品《ひまわり》も一際目を引く作品である。寺田も池袋モンパルナスで松本らと交流をしていた作家のひとりだが、早くからシュルレアリスムに関心を持っていたことでも知られている。




















