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ろう者と聴者が出会う舞台『黙るな 動け 呼吸しろ』レポート。ろう文化と聴文化、その境界に立つ

11月29日、東京・上野の東京文化会館大ホールで「ろう者とろう文化に対する社会的認知」と「ろう者と聴者が互いに共通理解を図ること」を目的とした舞台作品『黙るな 動け 呼吸しろ』が上演された。舞台の内容や観客の様子をレポートするほか、総合監修を務めた日比野克彦(東京藝術大学学長)と、構成・演出を務めた牧原依里(映画作家 / 演出家)のふたりのコメントもあわせて掲載する。

文=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部) 写真提供=アーツカウンシル東京(撮影=加藤甫、川島彩水)

 11月29日、東京文化会館大ホールにて、舞台作品『黙るな 動け 呼吸しろ』が上演された。

 本公演は、東京都のアートプロジェクト「TOKYO FORWARD 2025 文化プログラム」の一貫であり、「ろう者とろう文化に対する社会的認知の向上」と「ろう者と聴者が相互に理解を深めること」を目的として制作されたものだ。総合監修を東京藝術大学学長の日比野克彦が、演出を牧原依里と島地保武が、ドラマトゥルクを雫境(だけい)と長島確が務めている。

 当日は、聴文化・ろう文化それぞれを背景に持つ多様な人々が一堂に会し、会場では音声ガイドや字幕タブレットの予約貸出も行われていた。

本公演タイトルの「黙るな 動け 呼吸しろ」では、言葉を喋ることで表現する聴者と、身体言語である手話を用いて表現するろう者、そして両者に共通する“生きる”ということを表していると総合監修の日比野は語る
今年2月に実施された記者発表の様子。左から、長島確(ドラマトゥルク)、雫境(ドラマトゥルク)、牧原依里(構成・演出)、日比野克彦(総合監修)、島地保武(演出・出演)
ストーリー

まわりを霧に囲まれたまち。
建国記念日の式典が行われている。
そこへ1人の男、チャトが迷い込んでくる。
霧を抜けて別のまちからやって来たのだ。

この《霧のまち》は、浮遊し移動するまちである。
音という概念がない世界で、言語は身体だ。
独自の文化が発達し、あらゆるものがこのまちの住人に便利なようにできている。
長い年月のなかで周期的に「もうひとつのまち」に近づくが、霧に遮られ、互いに知らない。
迷い込んできた男は、「オンガク」を伴う式典の様子に見とれる。
やがて住人3人と親しくなり、このまちで暮らすようになる。

2年が過ぎ、男は3人を「もうひとつのまち」へ誘う。
そのまちの名は《百層》。
一極集中が進み切った超高層巨大都市である。
音の文化が発達し、言語も音声である。
一方で、人口過密ゆえに騒音問題が深刻化し、極度に静寂が求められている。

2年ぶりに戻った男は、3人にまちを案内する。
《百層》のさまざまな住人との出会いを通して、
やがて4人はコンサートに参加することになる……

(公式ウェブサイトより引用)

編集部

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