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「芸術未来研究場展」(東京藝術大学大学美術館)レポート。藝大が挑む“アートの社会実装”とは【2/3ページ】

 6つのなかでも、とくに気になった領域とその事例をいくつかピックアップして紹介したい。まず「ケア・コミュニケーション」では、医療・福祉・地域コミュニティなど、ウェルビーイングに関わる領域におけるアートの社会的価値を探究している。その具体例として、「熊本版文化的処方推進室」の取り組みが紹介されていた。

 「文化的処方」とは、文化・芸術の力で人々の健康観をアップデートしていくことを目指すもので、「身体的」な健康のみならず、「社会的」「精神的」な健康にも意識を向けることを促す取り組みだ。会場では、熊本市・熊本大学・熊本市現代美術館が連携して進めている熊本版の実践が取り上げられ、アート/文化と地域・市民の活動をつなぐことで、一人ひとりのウェルビーイング向上を後押しするプロジェクトとして紹介されていた。

展示風景より、「熊本版文化的処方推進室」。会場には、熊本市現代美術館内に設置されている推進室の様子が再現され、手書きの会議ログも壁に掲載されている

 「アートDX」の領域はデジタル技術やICT技術を活用した教育研究を推進し、アートの可能性を拡張することを試みている。ここでとくに注目したのは、東京科学大学との共同研究プロジェクト「アニメーション・インスタレーションのホスピタルアート応用と実践」だ。壁面にはシロクマのアニメーションが投影され、患者の動きに応じてシロクマが反応するインタラクティブな作品となっている。身体を動かす楽しさを通じて、リハビリテーションへの意欲向上を目指す試みであり、先ほどの「ケア・コミュニケーション」領域と関連して、こちらも大変興味深い取り組みと言える。

展示風景より、東京藝術大学×東京科学大学 課題共有型研究マッチングプロジェクト