「ドナルド・キーン展  Seeds in the Heart」(世田谷文学館)開幕レポート。その足跡が映し出す、日本文化への深いまなざし【4/4ページ】

 2011年の東日本大震災を契機に、キーンは日本国籍と永住権を取得し、翌年には交流の深かった上原誠己(浄瑠璃三味線奏者・五代目鶴澤淺造)を養子に迎えた。

 最終章「黄犬ダイアリー」では、帰化後のキーンが日本での日常を楽しむ姿や、周囲の人々との温かな交流を、ゆかりの品々や写真を通して紹介している。仏壇も展示されており、キーンの人柄にもふれることのできる貴重な機会となっている。

展示風景より
展示風景より

 本展を通して強く感じられるのは、ドナルド・キーンを貫く日本文学への情熱だ。膨大な翻訳と研究に向き合い続けた姿勢からは、学問の枠を超え、日本語という表現の奥行きを見つめる日本の言葉に対する深い洞察がうかがえる。そしてその根底には、生涯をかけて日本と向き合った彼ならではの、揺るぎない日本文化への愛が息づいていた。キーンのまなざしは、日本文化に生きる我々にとっても、学ぶべきものがあるのではないだろうか。

展示風景より

編集部