「Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION」(そごう美術館)開幕レポート。Perfumeの歴代衣装から見る20年間の活動の軌跡【2/3ページ】

 1章「近未来型の挑戦者」では、デビューした05年から11年までの衣装が並ぶ。このときスタイリングを担当していたのは内澤研。じつは当時、Perfumeの衣装のほとんどは既成服でつくられていた。これは、ファンが同じ服を買ってPerfumeと同じスタイルをできるように、という内澤の戦略によるスタイリングであった。衣装もファンとのコミュニケーション手段のひとつだと考えていたPerfumeのスタンスに合わせた画期的なアイディアである。会場では、今回初出展となる、初の武道館ライブの衣装や初のNHK紅白歌合戦出場時(第59回)の衣装も並んでいる。

 2章「止まらない進化」では、12〜15年の衣装が紹介される。11年から、内澤に代わってToshio Takedaと三田真一が衣装デザインを手がけている。この頃から、既成服を用いた衣装ではなく、服の構造を一からつくり出す、完全にオリジナルな衣装づくりへと変化していく。

 12年にユニバーサルミュージックへ移籍したのが大きな転機となり、13年の「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」で、Perfumeはクリエイティブ集団Rhizomatiksの映像技術をかけ合わせた舞台を披露し、高い評価を得た。会場では、再帰性反射素材を使ったプロジェクションマッピングを映し出す衣装も展示されている。このまったく新しい技術を用いた舞台を、12年前に実現させていたという先進性は特筆に値するだろう。

 この頃より、ファッション×テクノロジーといった分野を開拓していくが、そのスタンスを示すひとつに「Spring of Life」のミュージックビデオで使われた衣装がある。LEDが仕込まれたものとなっており、楽曲のリズムと振り付けに連動して発光する仕組みになっている。本来は楽器をコントロールするために使う端末を、衣装に用いるという新しい試みであった。

展示風景より、「Spring of Life」のミュージックビデオで使われた衣装

 またPerfumeの世界観を、幾何学図形模様のデザインで表現し始めたのもこの頃だ。13年の「Magic of Love」のミュージックビデオで使われた2種類の衣装にも、幾何学図形模様があしらわれている。三角のパターンが連続しているように見えるデザインも、肩の部分と肘の部分ではつくられ方が異なり、激しく踊ることを想定された「衣装」である前提を踏まえた工夫にも要注目だ。

展示風景より、「Magic of Love」のミュージックビデオで使われた2種類の衣装

 Perfumeの衣装づくりには、一度つくった衣装のデザインの一部を、次の衣装に継承するという特徴がある。「Magic of Love」の衣装は、これ以降つくられる宇宙服を模した衣装たちの、一番はじめのモデルである。年代順に衣装が並ぶ本展だからこそ、Perfumeの衣装史の系譜をたどるといった楽しみ方もできる。

編集部