コレクションへの護立の想い
画家たちとの交流と作品蒐集のなかで、護立は多くの言葉を残している。美術雑誌などの取材のほか、自ら立ち上げた美術研究会「清賞会(せいしょうかい)」では、コレクションから50点以上の日本画も紹介し、戦争が激化した昭和18年(1943)頃からは蒐集した作品に関する書付を残し始め、多くが作品を収める箱の中に保管された。蒐集した経緯、その作品の所感、画家との関わりなどが記されたそれらは、作品の記録であるとともに、護立の作家観、作品への想いにあふれ、優れたコレクターとしての眼と、作品へのかぎりない愛を感じさせて、護立その人をも浮かび上がらせるだろう。
また、特別展示として後期には、中国の禅僧・清拙正澄(せいせつしょうちょう)と楚石梵琦(そせきぼんき)の墨蹟(いずれも重要文化財)も修理後の初展示となる。中国文化にも造詣の深かった護立のもうひとつの眼も優品で感じられる。


“看板娘”ならぬ“看板猫”に誘われて、近代日本画の粋を楽しみ、類い稀なるコレクターの想いに触れる静かな時間を秋の気配とともに過ごしてみてはいかがだろうか。
なお、修理完成を記念して『季刊 永青文庫』では《黒き猫》を特集して徹底解剖。修理の詳細から制作のひみつ、本作が生まれるまでの背景や護立の春草コレクションの全容まで、各分野の専門家による様々な切り口からのアプローチは、作品をより魅力的に、より身近にしてくれるはずだ。




















