2024.1.25

中国陶磁の入門編。永青文庫で楽しむ、中国2000年のやきものの魅力

漢~清時代まで永青文庫に所蔵される100点を超える中国陶磁のコレクションは、およそ2000年にわたる中国のやきものの歴史をたどれるのが特徴とされる。その幅広い蒐集品を、「色」をテーマに紹介する展覧会が開催中だ。重要文化財3点を含む選りすぐりの優品たちは、初心者にも楽しく中国陶磁の魅力を伝えてくれる。

文=坂本裕子

展示風景より、「緑釉獅子香炉」 (明時代 17世紀、永青文庫蔵)

 中国の陶磁は、新石器時代から始まったとされ、その歴史のなかで生み出された品々は、日本のみならず、世界をも魅了してきた。日本では、古くから「唐物」として珍重され、近代には財閥となった実業家などにより、鑑賞を主目的とした「鑑賞陶器」として中国陶磁の蒐集が熱を帯びた。

 永青文庫には、漢時代から清時代まで、100点を超える中国陶磁が所蔵される。大名細川家に伝来したものと、同館の設立者・護立(もりたつ、1883~1970)が近代に蒐集したもので構成され、所蔵品で約2000年にわたる中国陶磁の歴史をたどれる充実ぶりだ。

 幼いころから漢籍に接し、中国文化に強い憧れを抱いていた護立は、大正期に滞在したヨーロッパで、当時注目されていた陶磁器などの中国古美術を本格的に蒐集しはじめたという。国内でその価値をいち早く見出した彼は、「鑑賞陶磁器」蒐集の草分けのひとりと位置づけられている。さらに、こうしたコレクターのみではなく、当時の工芸家や画家までもが中国陶磁に魅せられ、技法を研究し、自身の作品に取り込み、あるいはモティーフにした。

 護立の蒐集品を中心に、中国陶磁を紹介する展覧会「中国陶磁の色彩―2000年のいろどり―」は、重要文化財3点を含む優品揃いで、唐三彩、白磁、青磁、青花、五彩など、「色」を切り口にその魅力に迫るものだ。併せて洋画家・梅原龍三郎や陶芸家・河井寬次郎など近代の作家が描き、再現した作品も紹介され、雄大な中国陶磁の世界とともに近代の熱気をも伝えてくれる。

 色から楽しむ仕掛けと、逸品揃いの空間は、中国陶磁の大きな流れもとらえられ、ファンのみならず、中国陶磁って難しいのでは……と思っている人にも楽しい入門になるだろう。

灰陶(かいとう)