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「永青文庫 近代日本画の粋―あの猫が帰ってくる!―」(永青文庫)レポート。近代日本を代表する画家の作品とともに“看板猫”と再会【3/4ページ】

画家たちと護立の交流

 春草の没後も彼の作品を蒐集するとともに、護立は同時代の画家たちを見出していく。とくに深い親交を結んだひとりが大観で、その付き合いは15歳年上であった彼の死まで長く続いたそうだ。大観の畢生の作《生々流転》(重要文化財、東京国立近代美術館蔵)も護立が入手していたという。

 昭和期には小林古径に注目し、たびたびアトリエを訪問して親交を深め、代表作《髪》や《孔雀》を購入している。本展では、こうした交流を感じさせる書簡や資料、画稿が作品とともに紹介される。それらは、画家の人となりやその制作過程を伝えるのみならず、小襖(ふすま)や扇といった生活を彩る身近な品にも及んでおり、多くが護立の注文であったことをうかがわせる。たんなる作家とコレクターの関係を超えた、護立の思い入れが感じられるだろう。

「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、横山大観《社頭雪》(1931) ※前期展示
大観が細川家の家令に宛てた送り状とともに
「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、小林古径の画稿 ※頁替えあり
作家没後に遺族から細川家に寄贈されたもの。制作過程がわかる貴重な資料は本画のパネルとともに

 護立は、新潟・赤倉温泉の別荘に親しい画家たちを招き、訪問客に渡すための手拭のデザインなども彼らに依頼している。下図と完成品からは、急な求めに苦心しながらも応じてみせる画家と、生活のなかに美を広げていこうとする護立の楽しげな遊び心があふれている。

「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、横山大観《扇子箱下図》(昭和初期)。護立からの依頼と思われる扇子箱はこの下図のとおりに精緻につくられたという
「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、手前から木村武山《椿図扇面》、下村観山《老松図扇面》
「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、右から横山大観《月に雲図(小襖)》、《山脈図(小襖)》(ともに1921頃)
「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、横山大観と荒木寛方の《手拭下図》(ともに昭和初期)
「細川護立と日本画家の交流―コレクション形成の背景―」展示風景より、横山大観と平福百穂下図の手拭

編集部