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「永青文庫 近代日本画の粋―あの猫が帰ってくる!―」(永青文庫)レポート。近代日本を代表する画家の作品とともに“看板猫”と再会【2/4ページ】

新たな日本画への護立のまなざし

 「美術の殿様」と言われた護立は、幅広いジャンルの美術工芸品を蒐集したことで知られる。早くも16歳頃より刀剣と禅画を集め始めるが、並行して自身と同時代の画家たちによる近代日本画に強い関心を持っていたという。展覧会で横山大観、下村観山、菱田春草の作品に感銘を受け、東京帝国大学の学生だった24歳の時に、彼らの作品を購入する。他者の評価に依らず、未だそれほど評価を得ていなかった画家たちに注目した護立の早熟と眼の確かさに驚かされる。

 その後、多くの画家たちを支援し、親交を結びながら次々と優品を入手して、コレクションを充実させていくが、夭折した春草とはその機会がなかったらしい。《黒き猫》も《落葉》も、展覧会(文展)発表後すぐに入手できたわけではなく、逃したときの悔しさを残してもいる。それでも大観、観山、春草の3人のうち、護立がもっとも期待していたのが春草で、最盛期には21点の春草の作品を所蔵していたという。その気持ちが、2点の名作をも同館にもたらしたと言えよう。

 護立の近代日本画コレクションは、その歴史とともに永青文庫へと受け継がれ、同館の特色の重要な要素となるとともに、国内美術館の主要なコレクションへと広がっていくのだ。

「近代日本画コレクションの粋―細川護立から永青文庫へ―」展示風景より、横山大観《柿紅葉》(1920) ※前期展示
「近代日本画コレクションの粋―細川護立から永青文庫へ―」展示風景より、菱田春草《六歌仙》(1899)、《平重盛》(1894頃) ※前期展示
「近代日本画コレクションの粋―細川護立から永青文庫へ―」展示風景より、菱田春草《平重盛》(1894頃) ※前期展示
「近代日本画コレクションの粋―細川護立から永青文庫へ―」展示風景より、作者不詳《菱田春草「普賢菩薩」(模本)》 ※前期展示
細部まで精緻に写されていることから、原本(現・東京国立近代美術館蔵)がまだ細川家にあった頃の作と考えられる

編集部